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テレビのフェイク、ヘイト番組を取り締まるには?

『ニュース女子』への「重大な放送倫理違反」“判決”をめぐって

香山リカ 精神科医、立教大学現代心理学部教授

1月2日放送の「ニュース女子」から 2017年1月2日放送の「ニュース女子」から

 昨年(2017年)12月14日、放送倫理・番組向上機構(以下、BPOと表記)の放送倫理検証委員会が、第27号の委員会決定を意見書として公表した。意見書のタイトルは、「東京メトロポリタンテレビジョン『ニュース女子』沖縄基地問題の特集に関する意見」だ。

 当日の午後、同委員会の川端和治委員長以下、今回の案件で中心的な役割を果たした3人の委員が出席して記者会見が開かれた。私は昨年までこの委員会の委員を務めていたので、関係者として会場で会見を傍聴させてもらった。理由は、一刻も早く意見書を見たかったからだ。

 会場に着いて手わたされた意見書は24ページあったが、まず後ろから開き「委員会の判断」の項を探す。裁判でいえば“判決”にあたるのがこの箇所なのだ。そこにはこうあった。

 「本件放送には複数の放送倫理上の問題が含まれており、そのような番組を適正な考査を行うことなく放送した点において、TOKYO MXには重大な放送倫理違反があったと委員会は判断する」

 “判決”は「放送倫理違反あり」だ。裁判で言えば“有罪”となる。しかも、「重大な」という形容詞までついている。私はひとまず安堵した。今回の案件になった番組は、以下にあるように多くの人が「問題あり」というより「ひどい」と直観的に感じるものだろう。しかし、「誰が見ても明らかにひどい」からこそ、逆にそれをいざBPOの正式意見とするとなると、すぐには「これは有罪」とは理屈をつけるのがむずかしいと思われる案件だったのである。

 この『ニュース女子 沖縄特集』に関して、ここで再び詳細に説明することはしない。沖縄の米軍基地とくに高江ヘリパッド建設の反対活動に関して、反対派の住民や抗議活動に参加している人にまったく取材をせぬまま、「(反対派に)日当が出ている」「地元の救急車を反対派が止めた」といった事実に反するデマのレポート、わずかな事象を針小棒大に取り上げたVTRをネタに、スタジオで評論家や学者、タレントなどが嘲笑しながら語り合うという、どこをどう切り取っても悪意とデタラメに彩られた番組だったことは、多くの人が報道などで知っているだろう。

 とくに、「日当」に関するウワサが沖縄でさまざまな反・反基地運動を展開するボギー手登根(てどこん)氏により紹介されるVTRのあと、スタジオでは「市民特派員」という名で現地レポートをしてくれる人たちをカンパで高江に派遣した人権団体の共同代表のひとり辛淑玉氏の名前が突然あげられ、「黒幕」とまで言われたのは、悪ふざけの域をはるかに超えた犯罪的な名誉棄損といえる。

放送局と制作会社をめぐる悪条件

 ただ私は、以下に述べるような理由で、BPO放送倫理検証委員会はことによっては「放送倫理違反とは言えない」という結論を出すのではないか、とひそかに危惧していたのだ。

 それは決してこの番組が倫理違反と認定できないから、ではない。

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