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[2017年 映画ベスト5+アルファ、その他]

映画それ自体として訴求力をもつ作品

藤崎康 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

『散歩する侵略者』(黒沢清)拡大『散歩する侵略者』(黒沢清)の公式サイトより
ベスト5
『散歩する侵略者』(黒沢清)

 宇宙生命体/侵略者によって肉体を乗っ取られ、概念/通念を奪われる人間たちの奇妙な言動をメインに描くSF人間ドラマの超傑作だが、夫婦間の愛の再生や、有事の際には機械のように作動する国家というシステムの恐ろしさが主題化されると同時に、格闘技の実況中継的な臨場感あふれるアクション、人間VS無人爆撃機のスリル満点の闘い、侵略者VS警察のハードな銃撃戦などに、身震いするほどのリアルさが渦巻く。横長のシネスコ画面によって切り取られる空間の表情も絶品。本作のスピンオフ作品としてTVドラマ化され、のちに劇場公開された『予兆 散歩する侵略者』全5話も必見。2017/10/03同/10/17同/10/24の本欄参照。

『パーソナル・ショッパー』(オリヴィエ・アサイヤス)
 セレブの服などを買い付ける“パーソナル・ショッパー/買い物代行業者”であり、霊能者/霊媒でもあるヒロインの遭遇する超常現象を精妙かつ大胆に映像化した傑作。スマートフォンの画面が異界への入り口であるというアイデア、煙のような気体状の幽霊の出現/エクトプラズム現象の描写、いつも無表情で抑揚を抑えた低い声で喋るクリステン・スチュワートの演技などなど、すべてが素晴らしい。また、スマホによる彼女と謎の男とのメッセージ交換は、虚実ないまぜの情報が錯綜する今日の世相をリアルに映し出す。2017/6/13同/6/15の本欄参照。

『アウトレイジ 最終章』(北野武)
 ご存じ、“アウトレイジ”シリーズのcoda(コーダ)/完結編。前2作同様、裏社会の組織間の熾烈な覇権争い、えげつない罠の仕掛け合いが、残酷かつクールに描破されるが、つまりそこで前面に出るのは、義理も人情もへったくれもないヤクザ社会の裸形の暴力だ。ちょっとしたトラブルが取り返しのつかない暴力の連鎖を生む、という作劇は本作でも絶好調だが、各場面がそれぞれ緊密に呼応してドラマを加速度的にヒートアップさせる演出は、まったくもって見事である。それにしても、塩見三省、西田敏行、金田時男らの“顔圧(がんあつ)”の凄さはどうだ。2017/11/8の本欄参照。ちなみに、今般の政界、相撲界、某八幡宮で起きたoutrageな騒擾(そうじょう)、ないしは事件の報道を見るにつけ、本作は現代社会の端的な縮図にも思えてくる。 ・・・続きを読む
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筆者

藤崎康

藤崎康(ふじさき・こう) 映画評論家、文芸評論家、慶応義塾大学、学習院大学講師

東京都生まれ。映画評論家、文芸評論家。1983年、慶応義塾大学フランス文学科大学院博士課程修了。著書に『戦争の映画史――恐怖と快楽のフィルム学』(朝日選書)など。現在『クロード・シャブロル論』(仮題)を準備中。熱狂的なスロージョガ―、かつ草テニスプレーヤー。わが人生のべスト3(順不同)は邦画が、山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』、江崎実生『逢いたくて逢いたくて』、黒沢清『叫』、洋画がジョン・フォード『長い灰色の線』、クロード・シャブロル『野獣死すべし』、シルベスター・スタローン『ランボー 最後の戦場』(いずれも順不同)

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