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【公演評】花組『ポーの一族』

萩尾望都の耽美な世界を明日海りおが完全再現、宝塚歌劇の魅力を最大限に魅せた

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『ポーの一族』公演から、エドガー役の明日海りお=岸隆子撮影

 花組ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』が、1月1日、宝塚大劇場で初日を迎えました。原作は、少女漫画界の巨匠・萩尾望都さんが1970年代に描いた吸血鬼“バンパネラ”の物語で、漫画の域を超えた耽美な世界観が、当時の少女たちをとりこにしました。今回、演出を手がけた小池修一郎さんも魅せられた一人。歌劇団入団以来、30年以上熱望し続けたという舞台化の夢がついに実現したのは、原作ファンにとっても驚きのニュースだったでしょう。

 宝塚ではこれまで『ベルサイユのばら』から『ルパン三世』まで、さまざまな漫画を題材にした作品を上演し、夢の三次元化を実現させてきましたが、『ポーの一族』は、その究極といえるかもしれません。永遠に年をとらない美貌の少年エドガーを演じるのは、もちろん花組トップスターの明日海りおさん。エドガーと魂で結ばれるアランには柚香光さんを配し、花組メンバーの最強ビジュアルで宝塚歌劇独自の魅力を最大限に魅せ、2018年のスタートを華やかに飾りました。

耽美な世界観で明日海最高の当たり役

拡大『ポーの一族』公演から、エドガー役の明日海りお=岸隆子撮影
 『ポーの一族』の主人公は“バンパネラ”で “永遠の少年”。特殊なシチュエーションに加え、萩尾先生独特のタッチが印象的すぎて、舞台化が難しかったのは想像に難くありません。このたびの上演まで30年の月日が必要だったのは、もしや明日海さんがトップスターとして充実期を迎えるのを待っていたの? そう思わせるほどに、まぎれもないエドガー・ポーツネル、その人が大劇場の舞台に立っていました。

 物語は1964年、バイク・ブラウン4世(水美舞斗)らバンパネラ研究家たちが、100年以上語り継がれてきたバンパネラ伝説を明かすことから始まります。1865年に書かれたグレン・スミスの日記に書かれていたのは、エドガーという少年とその家族が、時を止めたまま生き続ける「ポーの一族」であること。そして、彼らはまだ実在しているかもしれないということ……。

――イギリスの片田舎スコッティ、乳母に捨てられた幼いエドガー(明日海)と妹メリーベル(華優希)は、老ハンナ(高翔みず希)に拾われた。村人たちがバンパネラが住むと噂する森の中の館で育てられ、13年の時が経つ。ある日、エドガーはシーラ(仙名彩世)と名乗る貴婦人に出会う。ほのかな恋心を覚えるエドガーだったが、彼女は今夜、フランク・ポーツネル男爵(瀬戸かずや)と館で婚約式を挙げるという。だが行われた婚約式は、シーラを一族に迎えるバンパネラの儀式だった。一族がバンパネラだと知った村人たちは館に火を放つ。一族の危機を救うため、一族で最も濃く強い血を宿す大老ポー(一樹千尋)は、エドガーに自らのエナジーを注ぎ、一族に加えるのだった。

 巻き毛に青い瞳、無垢な少年の姿をした明日海さんはとにかく美しく、漫画のイメージそのものです。永遠の命を得た苦しみにさいなまれながらも、抗えないバンパネラの本能が顔を出す……純粋と魔性が共存するエドガーの魅力は、明日海さんが培ってきた表現力に彩られ、魅惑的なキャラクターが一層際立っています。妹のメリーベルを慈しむ優しさと、少年にしか見えないピュアな演技、そしていつもより高い声で紡がれる切ない歌の数々に、終始胸が締め付けられてしまう。

 明日海さんはエドガーを演じるために宝塚にやってきたのか、いや、エドガー自身が明日海さんを待っていたのかもしれません。

◆公演情報◆
ミュージカル・ゴシック『ポーの一族』
2018年1月1日(月)~ 2月5日(月) 宝塚大劇場
2018年2月16日(金)~ 3月25日(日) 東京宝塚劇場
[スタッフ]
原作:萩尾望都『ポーの一族』(小学館フラワーコミックス)
脚本・演出:小池修一郎
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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