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【公演評】宙組『不滅の棘』

不老不死のカリスマスターに愛月ひかるがドラマシティ初主演で挑戦

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『不滅の棘』公演から、エロール・マックスウェル役の愛月ひかる(中央)=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 宙組公演ロマンス『不滅の棘(とげ)』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演中です(シアター・ドラマシティ公演は15日まで。1月23日~29日/東京・日本青年館)。カレル・チャペックの戯曲『マクロプロス事件』を題材にミュージカル化されたこの作品は、2003年に春野寿美礼(当時・花組トップスター)さん主演で大好評を博しました。白一色に統一された舞台と斬新な演出が当時大きな話題となり、再演を楽しみにしていたファンも多いのではないでしょうか。

 宝塚大劇場で活躍中の“バンパネラ”ならぬ、主人公は300年以上生きている男です。演じるのは宙組の中堅を担う男役スター・愛月ひかるさん。昨年、大劇場公演『神々の土地』で怪僧ラスプーチンを熱演し高い評価を得ましたが、いよいよドラマシティ初主演で、東京にも進出となりました。

 人は誰でも死から逃れることはできません。では、病気や怪我の痛み、死の恐怖がなければ、人は幸せになれるでしょうか――。重いテーマを掲げながら、永遠の命を得たカリスマスターに愛月さんが全力で挑みます。

謎めくゴージャススターになった愛月

拡大『不滅の棘』公演から、エリイ・マック・グレゴル役の愛月ひかる=岸隆子(Studio Elenish)撮影
 真っ白な毛皮のロングコートを着て美女をはべらす魅惑の大スター、エロール・マックスウェルは強烈なキャラクターです。初演の春野さんは、カリスマ性と圧倒的歌唱力で、当て書きされたようにハマっていただけに、愛月さんがどう演じるのか注目が集まりました。

 主人公が生きた300年超の歴史の中、この作品では3つの時代、3つの名前で登場します。

――1603年、ギリシャ・クレタ島。エリイ・マクロプロス(愛月)は、国王ルドルフ2世の医師だった父から不死の薬を飲まされ、永遠の命を与えられた。1816年のプラハでは、宮廷のお抱え歌手エリイ・マック・グレゴル(愛月)と名乗り、誰かを愛することも拒み続け生きていたが、令嬢フリーダ・プルス(遥羽らら)のまっすぐな愛に自らの誓いを破ってしまう。そして1933年、プラハ。コレナティ(凛城きら)の弁護士事務所では、フリーダ・ムハ(遥羽)が、4代前から引き継いだ裁判の敗訴目前に苛立ちを募らせていた。コレナティやその息子アルベルト(澄輝さやと)の助言にも耳を貸そうとしない。そこへ突然、プラハで公演中の有名歌手エロール・マックスウェル(愛月)が現れ、裁判について有力な情報を次々と語り出す。

 主人公エロール・マックスウェルは、まず一目でスターと納得させるルックスで勝負が決まるでしょう。演じる愛月さんは、古い時代のシルクハットとマント風コートから一転、毛皮のロングコートにスーツまで華麗に着こなし、貫禄も十分。長身で抜群のスタイルもあいまって、美女をはべらす大物スターらしさにあふれていました。課題の歌も声がよく出るようになり、曲によってばらつきはあるものの、努力と成長が感じられます。

 そしてこの公演の特徴は、なんといってもその“色”。セット、キャストの衣装、小道具などすべてが白一色で、なんだか異空間に身を投じた気分になりそう? そんな弁護士事務所へ突然、謎のゴージャススターがド派手に登場し、フリーダたちも客席も、ただただ呆然です。

◆公演情報◆
ロマンス 『不滅の棘(とげ)』
[スタッフ]
原作:カレル・チャペック
翻訳:田才益夫(八月舎刊「マクロプロス事件」より)
脚本・演出:木村信司
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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