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城田優、『ブロードウェイと銃弾』に主演

斜に構えたセクシーなギャングは、はまり役だと直感

米満ゆうこ フリーライター


拡大城田優=安田新之助撮影

 2016年はミュージカル『エリザベート』の人気役トートをはじめ、地球ゴージャスプロデュース公演『The Love Bugs』にも主演し、コンスタントにミュージカルファンを楽しませてくれる城田優。昨年は、世界のミュージカルトップスターと城田優が共演するコンサート『4Stars』 にも登場し、甘くどこまでも伸びる美声を劇場中に響かせた。そして、今年はミュージカル『ブロードウェイと銃弾』に浦井健治とW主演する。ウディ・アレンが手掛けた同名映画は1994年に公開され、2014年にブロードウェイでウディ・アレン自らが脚本を書き、ミュージカルになった。

 1920年代の禁酒法時代のニューヨークを舞台に、浦井演じる売れない劇作家デビッドは念願であった自身の戯曲のブロードウェイでの上演に漕ぎつけた。しかし、出資者はギャングで、城田演じるギャングの部下チーチをはじめ、大女優らが台本に口を出し始めるというコメディ・ミュージカルだ。チーチ役の城田が、大阪市内で取材会に臨んだ。

コメディなので気張らずに演じたい

拡大城田優=安田新之助撮影

記者:まず、『ブロードウェイと銃弾』について、感じていることを教えてください。

城田:今まで「踊る」ミュージカルには、ご縁がなかったのか、避けてきたのか(笑)分からないですけれど、ダンスのシーンと言えば『ロミオ&ジュリエット』で一曲踊るぐらいでした。でも、この作品はタップダンスが多いらしいんです。まだ基礎練習しかやっていませんので、僕としてはそれが一番頑張らなきゃいけないところですね。作品としては、福田雄一さんの演出であり、福田さんからは『頑張らなくていいよ』と言われていますので、頑張らないつもりです(笑)。もちろん、頑張るんですよ。いい意味で気張らないという意味です。

記者:浦井さんとW主演ですね。

城田:僕が演じるチーチという役は、キーではあるんですけれど、メインは浦井君が演じるデビッドなんです。浦井君にカンパニーをまとめる役を任せて、僕は舞台でしっかりとチーチの役割を果たしたいです。僕にはチーチのほうがデビッドより合っていると思いますね。それに、客観的にプロデューサー目線で見ると、僕がデビッドをやると面白くないと思うんです。

記者:どうしてでしょう。

城田:直感です。圧倒的にチーチをやったほうが、より面白いと思います。役どころもはまると思います。基本的に直感で生きていますから、やるって言ったらやるし、やらないと言ったらやらない。そこは徹底していますね。実はロミオも心の中では「もう一回やりたい」と思っていたんですが、「やらない」と宣言したので、ううっ、どうしようと(笑)。「時には自分の言ったことを曲げてもいいんだよ」と周りは言うんですが、今のところ曲げられませんね。

記者:私は城田さんのデビッド、浦井さんのチーチという逆のパターンも見てみたかったです。デビッドのように困ってオロオロする城田さんは意外性があると思うのですが。

城田:うーーん、どうですかね。でもやっぱり、イメージではないですよね。ロミオ役も、城田でロミオはデカすぎるんじゃないかと思っていたんですが、自分の中で合点がいくポイントがあった。城田=ロミオはアリだな、と思えたからやったんです。城田=デビッドは(自分の中では)なかったですね。可能性はあるかもしれませんが、直感的にはないですね。

どの作品も時間をかけて命を注ぐ

拡大城田優=安田新之助撮影

記者:タップは実際練習されてみて、どういう感触をつかんでいますか。

城田:直感的にヤバいです(一同笑)。感じたままに対して、僕は努力するタイプなんです。芸能生活18年目なんですが、『4Stars』も一番ヤバいと思って、一番頑張って、自分が想像していた最悪のヤバい状況よりは良くなっています。舞台上で僕は失神するんじゃないか、歌詞がとぶんじゃないかと、そういうネガティブな気持ちから入るんです。それを絶対起こさないためには、練習するしかないんですね。僕のマインドがマイナス思考で固まっているので、それをポジティブな方向に持っていくには、成功するイメージを保ちつつ、猛練習する。何においても、結局、稽古にどれだけ時間をかけたかだと思います。『4Stars』は普段の10倍以上は練習しましたし、空き時間はずっと音源を聞いて、(本番期間中の)今も復習しています。だから、ダンスも同じですね。プロのダンサーのど真ん中で僕が踊るには説得力が必要です。練習だけは何百回とやりました。ダンサーの方たちが倒れて、ヘロヘロになっても一人で踊り続けました。今でもあの踊りは細かい振りまで全部覚えていますね。上手いか下手かは置いといて、少なくとも失敗はしないんです。どんな作品でも時間をかけて命を注いでいるんです。だから、『ブロードウェイと銃弾』では、相当タップの練習に時間をかけることになるでしょうね。

記者:ニューヨークのブロードウェイで『4Stars』のリハーサルをされたそうですが、何か『ブロードウェイと銃弾』のヒントになるものは見つかりましたか。

城田:福田さんとニューヨークでお会いしたのですが、その時はとにかく頭の中が『4Stars』のことでいっぱいだったんです。福田さんは、「城田君、そんなに抱え込まなくてもいい」と、『ブロードウェイと銃弾』よりも、心のケアをして下さいました(笑)。だから、楽しもうと思っています。この作品はコメディですから、気張っても仕方がない。福田さんも「俺の作品に出るのに、頑張っても仕方ないよ」とおっしゃるんです(笑)。もちろん、頑張るんですけれど。突き詰めるよりは、チーチ像をざっくりと作り、その日の状況で、どう転んでもいいように、臨機応変にしたいですね。

記者:『ブロードウェイと銃弾』の映画はご覧になられましたか。

城田:見ました。ストーリーの伏線や、キャラクターの意外性がすごく面白かったです。デビッドと(前田美波里さん演じる)へレンの色恋があったり、デビッドの恋人にある事実が発覚したり。チーチはボスの愛人のオリーブを守るはずだったのに、驚くような結末につながるんです。伏線が最終的には繋がっていきます。また、ずっと犬を抱っこしている女優、過食症の俳優など個々のキャラクターも面白いですね。そこに、デビッドがどう真ん中で立ち回っていくかです。チーチはその渦の中の一人。多彩な色の中で、デビッドは白で、チーチは黒だと思っています。

面白ければいい!福田作品は自由さが魅力

拡大城田優=安田新之助撮影

記者:福田作品の魅力はどこにあると思いますか。

城田:自由さですね。それにつきます。とにかく面白ければいい。明確にこうして、ああしてというのは福田さんにはないんです。信頼する役者には基本的に何も言わない。センスがない役者が出るとケガをするし、センスがある役者がやると輝く。今回は、ほとんどの方が福田作品の常連さんで、面白い方ばかりですので、すべては浦井健治君にかかっています。そこは大文字にしてもらってもかまいません(一同笑)。本人にも「健ちゃんに任せる」と言ってあります。それに、この作品はデビッドが真っすぐだから面白いんです。そこに対してチーチが色物になると本末転倒ですので、今の段階では、わざとチーチを面白く演じようとは思っていません。

記者:映画のチーチは妙にセクシーだったのですが、城田さんのチーチもそうなるのでしょうか。

城田:ふだんからセクシーだと言われます(一同笑)。

記者:そうですよね、失礼致しました(笑)。

城田:自分では、そうは思わないんですよ。普段の城田優を見てもらえれば分かるんですけど、全然セクシーじゃないです。でも、ロミオやティボルト役をやるとセクシーだと言われる。今回のチーチも色気がある役だからこそ、僕に合っていると思うんです。チャーミングで真っすぐで困っているデビッドよりも、斜に構えるチーチのほうが、ファンの皆さんも喜ぶと思うんですよ。

記者:翻訳劇に関してはどう思われますか。

城田:翻訳ものはやっぱり難しいと思うんですよね。とくにコメディは、翻訳すると全然意味が違ってくる。福田さんはなるべく作品の面白さをそのまま伝えたいとおっしゃっているんですが、向こうで生きるジョークが日本では生きなかったり、その難しさがある。基本的に日本で上演されるミュージカルは翻訳ものが多いんですが、コメディになると一層、そのハードルは高くなる。笑うところが、その国に住んでいないと分からないジョークだったり、時事ネタだったり。福田さんのすごいところは、それを日本人にわかりやすいように置き換える。それは観客にも受けているんですが、外国では違うネタになっているはず。そこが上手だと思いますね。

記者:原作に忠実なほうがいいという葛藤はありますか。

城田:一切ないです。僕はいただいた台本がすべてだと思っているので。制作する人たちが、「これで行きます」と決めているんですから、「原作はこうです」と言っても仕方がない。作品的におかしいと思うところがあれば突っ込みますが、出来上がった台本には文句は言わないようにしたい。例えば、気持ちのすれ違いがうまく表現できていないときは、原作はこうですよと言う場合はあります。それはお客さんに対しても分かりづらいと思いますから。でも、基本的には台本と演出家がすべてだと思います。

初日、中日、千秋楽を見に来てほしい

拡大城田優=安田新之助撮影

記者:ズバリ、この作品の見どころは何だと思いますか。

城田:デビッドがチーチにうながされて変化していくところですね。すごく人間らしい。ヒーローは基本的にカッコいいけれど、デビッドはカッコよくないし、嘘をつくし、ダサい。最終的にギャングにうながされてデビッドは台本を変えるんですが、考えたらすごいことですよね。絶対嫌だったチーチに対して、彼の色に染まっていって、作品を乗っ取られてしまう。デビッドは皆に転がされて振り回される。ほかのキャストはメリーゴーラウンドの青、赤、緑の馬のように多彩な色と形を持っていて、ぐるぐると回っている。そのど真ん中に浦井君がいるんです。

記者:大阪は22公演ありますね。

城田:福田×浦井×城田に加えて、平野綾ちゃん、ブラザートムさん、鈴木壮麻さん、前田美波里さんらすごいキャストが揃っています。絶対に面白い作品になりますよ。僕が一番ヤバいと思っているタップダンスも確実に見せ場になると思います。こんなに多い回数で、Wキャストではなくシングルキャストです。役者にとってすごくハードですが、キャストが全公演に出演するわけですから、ドンドンと面白い幅が広がってくるし、結束力も強まりますよね。毎日、高いクオリティを保つためにできることを僕も考えていきたいです。

記者:今、気にしていらっしゃるタップダンスも事前に東京公演がありますから、大阪公演のときには、すごく進化しているでしょうね。

城田:そうだと思います。東京で観た人たちが、大阪公演も観に来る現象が起きればいいですね。ミュージカルの魅力は、初日、中日、最終日だと思っていて、その3回を見れば、どんな変化があったのかよくわかります。山の入り口、その途中、頂上というのは、誰がどう見ても分かりやすいですよね。僕がお客さんだったら、初日、中日、千秋楽のチケットを買います(笑)。それは本当におすすめしたいですね。

◆公演情報◆
ミュージカル『ブロードウェイと銃弾』
2018年2月7日(水)~28日(水) 東京・日生劇場
2018年3月5日(月)~20日(火) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2018年3月24日(土)~4月1日(日) 福岡・博多座
[スタッフ]
脚本:ウディ・アレン
オリジナル振付:スーザン・ストローマン
演出:福田雄一
原作:ウディ・アレン/ダグラス・マクグラス(映画『ブロードウェイと銃弾』より)
[出演]
浦井健治、城田優
平野綾、保坂知寿、愛加あゆ、ブラザートム、鈴木壮麻、前田美波里 ほか
公式ホームページ

筆者

米満ゆうこ

米満ゆうこ(よねみつ・ゆうこ) フリーライター

「三度の飯よりアートが好き」で、国内外の舞台を中心に、アートをテーマに取材・執筆。ブロードウェイの観劇歴は20年以上にわたり、ブロードウェイの劇作家トニー・クシュナーや、演出家マイケル・メイヤー、スーザン・ストローマンらを追っかけて、現地で取材をしている。

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