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【公演評】星組『ドクトル・ジバゴ』

専科・轟悠がロシアの名作に挑戦、重厚な存在感と円熟の男役芸で星組の底力を引き出す

さかせがわ猫丸 フリーライター


 星組公演、ミュージカル『ドクトル・ジバゴ』が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました(2月20日~26日/TBS赤坂ACTシアター)。ロシアの作家ボリス・パステルナークの代表作で、ノーベル文学賞にも選ばれた『ドクトル・ジバゴ』は、ロシア革命が吹き荒れる20世紀初頭、時代の波に翻弄されながらも信念を持って生き抜いた、医師ユーリ・ジバゴの半生を描いています。主人公ユーリ役を演じるのは専科の轟悠さん。男役を極めた轟さんだからこそ出せる重厚感が、時代背景に揺れる人間ドラマと、それを演じる星組の底力を存分に引き出し、見ごたえたっぷりの作品となりました。

 ユーリが出会った運命の女性ラーラには、ドラマシティ公演のヒロインは二度目となる有沙瞳さん。ラーラの恋人で革命家のパーシャには瀬央ゆりあさんが、さわやかに、そして恐ろしく(!?)2つの顔を演じ分けて、新境地を開拓しているのも見逃せません。

轟の円熟と星組の若さがシンクロ

拡大『ドクトル・ジバゴ』公演から、ユーリ役の轟悠=岸隆子(Studio Elenish)撮影
 ユーリ役を演じる轟さんは、このところ花組公演『For the people -リンカーン 自由を求めた男-』や、宙組公演『双頭の鷲』などで重厚な演技を見せ、ますます渋さに磨きがかかってきました。長年培ってきた男役としての所作や醸し出す空気感は、まだ若い現役生には難しいだけに、作品のクオリティを高めるのはもちろん、生徒たちの底力を引き出すお手本にもなると言えるでしょう。そして、逆もまた然り。『ドクトル・ジバゴ』は轟さんと若い星組生たちがシンクロし、互いに高めあう醍醐味を、鮮やかに見せた作品でもありました。

――1910年代前半。モスクワの街では、新しい時代を求める民衆のデモ隊と、それをねじふせようとする竜騎兵との衝突が激しさを増していた。幼い頃に両親を亡くし、叔父アレクサンドル(輝咲玲央)のグロメコ家に引き取られたユーリ(轟)は、詩をたしなみながら医師を目指している。貴族としての誇りを持ちながらも、時代は労働者が国を支えつつあることを悟っていた。やがてユーリは医師となり、従妹のトーニャ(小桜ほのか)と婚約披露パーティーを開くが、宴の席に突然、洋裁工房の娘ラーラ(有沙)が飛び込んで来て、客の一人である弁護士のコマロフスキー(天寿光希)を銃で撃つという騒ぎが起こる。

 オープニングはモスクワの街に渦巻く民衆の怒りと、客席に登場した軍隊の激しい銃撃で、迫力あるシーンにいきなり圧倒されます。宝塚の作品で市民と国が対立する構図は、フランス革命がおなじみですが、今回は、宙組大劇場公演『神々の土地』に続くロシアもの。ヨーロッパとはまた違った色を感じさせ、独特の空気感にゾクゾクしてきました。

 轟さん演じる若き日のユーリは、つらい過去がありながらも、アレクサンドルやトーニャに愛されたことで、誠実で心優しい青年に成長していました。医師として、詩人として、人の命の尊さを誰よりも知る彼は、パーティーで撃たれたコマロフスキーを即座に手当てしますが、その男が、父をだまして死に追いやった張本人だと気づいたことから、彼の波乱に満ちた人生の幕が上がります。

◆公演情報◆
ミュージカル『ドクトル・ジバゴ』
~ボリス・パステルナーク作「ドクトル・ジバゴ」より~
2018年2月4日(日)~ 2月13日(火) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
2018年2月20日(火)~ 2月26日(月) TBS赤坂ACTシアター
[スタッフ]
脚本・演出:原田 諒
公式ホームページ

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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