メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

無料

板谷由夏『PHOTOGRAPH 51』で初舞台

やりたいことを一生懸命やっている人に響く物語

真名子陽子 ライター、エディター


拡大板谷由夏=安田新之助撮影

 ニコール・キッドマンが主演し、ロンドンで高い評価を得た『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ 51)』が、日本で初めて上演される。実話を元にした作品で、作者はアナ・ジーグラ、演出はサラナ・ラパインが担う。

 後に“世紀の大発見”と言われる、DNAの二重らせん構造を発見した女性科学者、ロザリンド・フランクリン。しかし、ノーベル賞を受賞したのはロザリンドではなかった……。研究に没頭した彼女と、彼女を取り巻く5人の男性。6人それぞれの物語に駆け引きや恋愛が展開され、熱気にあふれた90分ノンストップで贈る人間ドラマ。

 主人公ロザリンドを演じるのは、本作が初舞台で初主演となる板谷由夏。ドラマや映画、キャスターにデザイナーと幅広い世界で活躍する板谷の取材会が行われた。初舞台にかける思いや演じるロザリンド役について、そして決して難しい科学の話ではなく、好きなことを一生懸命がんばっている人に共感してもらえるのではという本作について、清々しく板谷らしいありのままの言葉で語ってくれた。

初舞台を意識するととてつもない不安が襲ってくる

拡大板谷由夏=安田新之助撮影

板谷:私にとって初めての舞台です。ただ、そのことを意識するととてつもない不安が襲ってきますので、初めてを楽しめるように、やったことがないことを楽しめるようにしたいと思っています。お稽古を含めた1カ月でその楽しさを見つけられるように、ネガティブに考えず、ポジティブにいこうと思っています。

記者:なぜ今回、舞台出演を決められたのでしょうか?

板谷:もともと舞台を観ることが好きですし、舞台経験のある友人も多いんです。この仕事はタイミングや役とのご縁なんですよね。今まで、そのタイミングが合わなかっただけなんです。今回、いろんなパズルが組み合わさって、このロザリンド役のお話をいただき、今、やるときなんだなと思ってお受けしました。いつか舞台にも出てみたいと思っていたので。本当にご縁としか言いようがないです。

記者:実際に台本を読まれていかがでしたか?

板谷:もう、やるしかないと思いました。演出家のサラナさんが同世代で、ニコール・キッドマンがやっていた役ですし、題材も興味がありましたし、やらないという選択肢はありませんでした。よしっ、きた!って感じです。

記者:今は、わくわくしている感じでしょうか?

板谷:そうですね……。いくらでもネガティブには考えられるのですが、考えても仕方がないので、ネガティブにならないように、何が待っているんだろうとポジティブに考えていこうと思っています。こればかりはやってみないと、わからないですね。お稽古が始まったら、ものすごいネガティブになっているかもしれないですし(笑)。

やりたいことをやり切ったという生き方に憧れる

拡大板谷由夏=安田新之助撮影

記者:ロザリンド役をやりたいと思った理由は?

板谷:あの時代に女性が科学に対してストイックに向き合っていたということにまず、同じ女性として惹かれました。37歳の若さで亡くなったという人生の切なさや儚さ、でもやりたいことをやり切ったという生き方にも憧れます。素直にすごい女性だなと。その人物を演じられるのであればやってみたいと思いました。

記者:男性社会が強い時代にはよくあった話。そういった背景についてどう思いますか?

板谷:女性が意志をもって貫くのは、今よりもずっと難しかったと思います。けれど、現代にも当てはまるところがあると思うんです。もちろん、女性が表に出てがんばっていますけど、まだまだ不自由もあるんじゃないかなと思うんですよね。ただ、そんな時代だったけれど、ロザリンドはやりたいことを貫きたかっただけだと思います。だから今、自分がやりたいことを一生懸命やっている女性にはとても響く物語だと思います。

記者:でも、最後がやるせなくて……。

板谷:もし、私がロザリンドの友人だったら、「一生懸命やることもいいけど、周りを見てチームプレイをしてみたら?」と言いたいです。……けれど、絶対に幸せだったと思うんです。自分の研究がとられたとか嫉妬とか、そういう意識はきっとなかったと思うんですよね。もちろん、ノーベル賞を受賞したことなんて知る由もなくて。自分のやりたいことに向かっていただけだと思うんです。科学者だから気難しいように映るけれど、自然が好きだったり、散歩が好きだったり、家族を大事にしていたり、すごく愛らしい人なんです。だからこそ、なぜ報われなかったかという悲しみが出てくるのかなと思います。

チームプレイが好きでこの仕事をやっているかも

拡大板谷由夏=安田新之助撮影

記者:ロザリンドとの共通点はありますか?

板谷:演出家のサラナに言われたのは、好奇心が旺盛なところが似ていると言われました。何かに没頭するところも似てるとも。

記者:ちなみにチームプレイは?

板谷:好きです! 作品を作る中で、私は俳優部として参加しますが、演出部がいて、照明部がいて録音部がいて、ひとつのチームで作品を作っています。ドラマだと3~4カ月間、みんなで一緒に作った後、またいつか集合しましょうとパッと解散する。ひとつの作品のためにみんなが集合してチームプレイをする、それが好きでこの仕事をやっているのかもしれません。

記者:サラナさんの印象は?

板谷:初めて会ったときに一緒にやりたいと思いました。この題材をとても愛していらっしゃって、この舞台をやりたいという強い思いが伝わりましたし、演出家として人間が好きなんだろうなと思いました。人を掘り下げることも、それを演出することも。私も人が好きで、人を知りたくてこの仕事をやっているところがあります。通訳が入りますので、コミュニケーションが大変なところもあるのですが、周波数が合うといいますか、考えていることや表現したいことが似ている気がしたんです。うまく言えないけれど、最初に会ったときにこの人について行こうと思いました。

根っこにあるのは好奇心。すべて芝居に返したい

記者:女優にかぎらずいろんなお仕事をされています。それもいろんなご縁があってのことでしょうか?

板谷:根っこにあるのは好奇心ですね。でも、40代になって思うのは、すべて芝居に返したいんだなと。キャスターも10年になるけれど、普段会えない職種の方に会って感じたことを芝居に返したい。そこはぶれないです。

記者:初めての舞台に向けて、始めたことはありますか?

板谷:昨年の夏から有酸素運動を始めました。もともと体力はあるんですけど、そこに甘んじずに基礎体力作りを始めました。これも、どうなるかわからないですね。1カ月のお稽古を通して、どんな風に体を使うのかを学びたいと思います。

記者:初舞台で楽しみにしているところは?

板谷:全部、楽しみなんです。本当に。具体的なことを挙げると、楽屋暖簾をどうしようとか、お客さまが観に来てくれた時のお土産をどうしようとか、化粧前の香りはどうしようとか、そんな具体的なことも楽しみだし、このメンバーとお芝居ができるのも楽しみです。映像はリハーサルしたその日にいきなり本番なんですね。でも、舞台は1カ月かけて作りあげていくので、それもどうなるんだろうと楽しみです。画では残らずにお客さまの目と脳裏にしか残らない、再生できないですから。お客さまも私も見ることができない。それもワクワクします。

紅一点、「みんな、ついてこい!」

拡大板谷由夏=安田新之助撮影

記者:キャストの皆さんとは?

板谷:昨年の12月にみんなで本読みをしました。翻訳ですし難しい単語もあるので、みんなでチェックしながらどうすればお客さまに届けられるかを確認しあいました。そういう時間はとても大事で、それぞれの役の気持ちを言いあったりしながら。それをサラナたちがさらに練り直してくれます。

記者:チームワークはいかがでしたか?

板谷:1日だけでしたが、すごく良い雰囲気だなと思いました。みんなワクワクしていましたから。

記者:紅一点ですね。

板谷:そうですね。その紅一点に「みんな、ついてこい!」って感じにしようかと(笑)。

記者:現場にはすぐに馴染めるタイプですか?

板谷:どの現場もすぐに馴染んじゃうタイプです。人見知りもしないので、連ドラにゲスト出演させて頂く際もスーッと入っていって、スーッといなくなるタイプですね(笑)。

記者:初めて会う方でも平気なんですか?

板谷:はい。興味しかないです。特に共演者は役を通して見るので、本人と役の共通点を探しますし、それを相手にわからないように観察する、というのをいつもやっています(笑)。

――最後にメッセージをお願いします。

板谷:科学という言葉が出てくるので難しく思われがちですが、この作品は人間ドラマです。コミュニケーションの難しさ、人間関係の切なさや悲しさ、人と人の関係とはなんだろうというのが繰り広げられる物語です。私も、人とは?ということに、はまっていくんだろうと思います。人間とは、という問いが根っこにある物語なので、いろんなコミュニティでがんばっている方が観ると、グッとくる作品だと思います。劇場でお待ちしています。よろしくお願いいたします。

◆公演情報◆
『PHOTOGRAPH 51(フォトグラフ 51)』
2018年4月6日(金)~22日(日)  東京・東京芸術劇場シアターウエスト
2018年4月25日(水)~26日(木) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
※お問い合わせ(10時~18時):梅田芸術劇場 0570-077-039[東京] 06-6377-3888[大阪]
※料金:全席指定・税込8,500円(東京・大阪)
[スタッフ]
作:アナ・ジーグラ
演出:サラナ・ラパイン
翻訳:芦澤いずみ
[出演]
板谷由夏、神尾佑、矢崎広、宮崎秋人、橋本淳、中村亀鶴
公式ホームページ
公式ツイッター
公式インスタグラム

筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

真名子陽子の新着記事

もっと見る