「違和感」を超えて、どう定着させるか
2018年03月06日
この思いを分かち合いたいと、水本光美さんに取材することにした。坂元のドラマ「カルテット」放映より前に、「夫さん」という言葉を教えてくれた研究者がいたと前回書いたが、その研究者が水本さんだ。ことばとジェンダーが専門で、現在は北九州市立大学名誉教授。水本さんのすごいところは、「夫さん」という言葉を広めるため、ドラマでこの言葉を使ってほしいと訴えていたところだ。話を聞かずばなるまい。
まずは「カルテット」の1年前、2016年の事情を簡単に説明する。当時、私はシニア女性誌の編集長をしていた。定期購読者への手紙を雑誌に毎号同封し、編集長メルマガというのも月に1度、送っていた。そこで「誰かの夫」の話を書くことが、少なからずあった。表現に悩んだが、「Aさんのご主人は~」としていた。60代の真ん中あたりの女性をメインの読者とする雑誌だけに、「Aさんの夫は~」と書くと失礼と感じる人がいるのではと思っていたからだ。
一方で、「まだ『ご主人』と呼ぶのですか?」という反応もあった。夫は「主人」ではないという、ごく真っ当な意見だった。「失礼かも」と「主人じゃない」の間でどうすればよいかと悩み、いっそ「誰かの夫をどう呼ぶか」をテーマに取り上げようと思った。そこでご登場いただいたのが水本さんだった。
2ページのインタビュー記事だったが、趣旨は見出し2本を紹介すれば、わかっていただけると思う。
<いつも困っているのは、人さまの配偶者の呼び方。「夫さん」はダメですか?>
<思い切って「夫さん」と使っても、変な顔をされることがほとんど。でも後ろめたさを感じながら「ご主人」と言うよりずっといい。>
この時の私は「夫さん」を名案だと思った。「夫」は客観的にみて「夫」だし、「さん」がついて「失礼」にはならない。だが、やはり耳慣れなさから「使いにくいかも」と思ったことは、前回も書いた。が、それにも水本さんは、名案を持っていた。その記事の最後に出てきた水本さんのこの言葉を引用する。
<「テレビドラマの主人公や影響力のある有名人が『夫さん』と使えば、流行語になって『イクメン』のように定着するかもしれない。誰か、力のある脚本家やプロデューサーの目に留まらないでしょうか」>
あの坂元裕二が使う「夫さん」、ブラボー!――「ご主人」に違和感をもつみなさんへの「福音」として
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