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続・あの坂元裕二が使う「夫さん」、ブラボー!

「違和感」を超えて、どう定着させるか

矢部万紀子 コラムニスト

坂元裕二拡大「夫さん」という呼び方をドラマで使っている脚本家の坂元裕二さん
 誰かの夫を「ご主人」などと呼ぶことに違和感がある人にとっては、坂元裕二という脚本家が使う「夫さん」という言葉は福音だ。

 この思いを分かち合いたいと、水本光美さんに取材することにした。坂元のドラマ「カルテット」放映より前に、「夫さん」という言葉を教えてくれた研究者がいたと前回書いたが、その研究者が水本さんだ。ことばとジェンダーが専門で、現在は北九州市立大学名誉教授。水本さんのすごいところは、「夫さん」という言葉を広めるため、ドラマでこの言葉を使ってほしいと訴えていたところだ。話を聞かずばなるまい。

 まずは「カルテット」の1年前、2016年の事情を簡単に説明する。当時、私はシニア女性誌の編集長をしていた。定期購読者への手紙を雑誌に毎号同封し、編集長メルマガというのも月に1度、送っていた。そこで「誰かの夫」の話を書くことが、少なからずあった。表現に悩んだが、「Aさんのご主人は~」としていた。60代の真ん中あたりの女性をメインの読者とする雑誌だけに、「Aさんの夫は~」と書くと失礼と感じる人がいるのではと思っていたからだ。

 一方で、「まだ『ご主人』と呼ぶのですか?」という反応もあった。夫は「主人」ではないという、ごく真っ当な意見だった。「失礼かも」と「主人じゃない」の間でどうすればよいかと悩み、いっそ「誰かの夫をどう呼ぶか」をテーマに取り上げようと思った。そこでご登場いただいたのが水本さんだった。

 2ページのインタビュー記事だったが、趣旨は見出し2本を紹介すれば、わかっていただけると思う。

 <いつも困っているのは、人さまの配偶者の呼び方。「夫さん」はダメですか?>
 <思い切って「夫さん」と使っても、変な顔をされることがほとんど。でも後ろめたさを感じながら「ご主人」と言うよりずっといい。>

 この時の私は「夫さん」を名案だと思った。「夫」は客観的にみて「夫」だし、「さん」がついて「失礼」にはならない。だが、やはり耳慣れなさから「使いにくいかも」と思ったことは、前回も書いた。が、それにも水本さんは、名案を持っていた。その記事の最後に出てきた水本さんのこの言葉を引用する。

 <「テレビドラマの主人公や影響力のある有名人が『夫さん』と使えば、流行語になって『イクメン』のように定着するかもしれない。誰か、力のある脚本家やプロデューサーの目に留まらないでしょうか」>

「夫さん」への抗議 ・・・続きを読む
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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。

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