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ワルがやりたい放題!?強烈な吸引力

【月刊タカラヅカ】上田久美子がショーを初演出

谷辺晃子


拡大ショー「BADDY」の珠城りょう=滝沢美穂子撮影

 【朝日新聞紙面より】演出家の上田久美子が初めて手がけたショー「BADDY(バッディ)―悪党(ヤツ)は月からやって来る―」が、宝塚大劇場(兵庫県宝塚市)で上演中だ。104年にわたる歌劇団の歩みで、座付きの女性演出家がショー作品をつくるのは初だが、それがどうしたといわんばかりのエネルギーにあふれ、気負いがない。しかも、歌劇団史に刻まれるだろう怪作に仕上がった。

 舞台は近未来の地球の首都、TAKARAZUKA―CITY。全大陸が統一され、戦争も犯罪も鎮圧された平和な世界に、月から大悪党のバッディ(珠城りょう)たちが乗り込んでくる。

 地球は禁煙なのに、彼らはたばこをプカプカ。パスポートを偽造するわ、食い逃げするわ、銀行を襲うわ。やりたい放題のワルたちを、200カ国語を操る万能のグッディ捜査官(愛希れいか)が追い詰めようと奮闘する。

 と、あらすじを説明してはみるものの、わけが分からないのは劇場でも同じ。現代音楽の無調の世界のように、筋うんぬんを超越した無法地帯が目の前に広がり、強烈な吸引力を持つ。ラインダンスでハイキックを連打し、フィナーレの大階段では珠城がサングラス姿でたばこを吹かす。どこに着地するのか見えないままの1時間だが、ストーリー性なんてすっ飛ばした心地よさに観客をいざなう。

 一方で、男役の群舞も、7分を超える充実のデュエットダンスもあり、ツボはしっかりと押さえる細やかさ。「主演だとなかなか悪役の機会がないのでうれしい。ちょっとコミカルで、いやあ、おもしろいですね」と珠城が言うように、大まじめな出演者の生き生きとした振る舞いがよく伝わる。

 そもそもタカラジェンヌの皆さんは、異星人のようなスタイルばかり。考えたら親和性は高いはずだ。

 「パリゼット」(1930年)も「花詩集」(33年)も、当時の客席をあぜんとさせながら歴史を刻んできた。なかでも衝撃は、初めてのラインダンスで話題をさらった1時間半のレビュー「モン・パリ」(27年)だった。ならば次は、1本もののショーなんてどうですか。

 12日まで。東京・日比谷の東京宝塚劇場では30日~5月6日。