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ベルリン国際映画祭「公開レター」問題の教訓

東京国際映画祭でも「透明性」は確保されているのか

林瑞絵 フリーライター、映画ジャーナリスト

Richard Hübner © Berlinale2014拡大映画祭のメイン会場は、ポツダム広場のベルリナーレ・パラスト Richard Hübner (c) Berlinale2014

受賞会見のルーマニア人女性アディナ・ピンティリエ監督=撮影・筆者拡大金熊賞の受賞会見をするアディナ・ピンティリエ監督=撮影・筆者
 極寒の2月のベルリンで、映画ファンの心を温める映画の祭典、第68回ベルリン映画祭(2018年2月15日~25日)が開かれたた。

 最高賞の「金熊賞」には、ルーマニアのアディナ・ピンティリエ監督作『タッチ・ミー・ノット』が輝いた。昨年の同賞受賞作、ハンガリーのイルディコー・エニュディ監督の『心と体と』(日本では2018年4月公開)に続き、2年連続で東欧の女性監督作品が頂点を極めたことになる。

 続く審査員グランプリの「銀熊賞」にも、ポーランドの女性監督マウゴシュカ・シュモフスカの『マグ』が受賞。コンペティション作品19本のうち、女性監督作品のノミネートは4本のみだったが、蓋を開ければ女性監督が大健闘だった。

 今年のベルリン映画祭は、ハリウッド発の性暴力の被害を告発する「Me Too運動」が起きてから初めての世界三大映画祭。映画祭側も映画業界の被害者を法的に支援するサイト「スピーク・アップ」の立ち上げを後押しし発表会も実施するなど、その余波は随所で見て取れた。そして受賞結果も「Me Too運動」の流れに乗るように、女性に花を持たせた結果となった。

© Manekino Film, Rohfilm, Pink, Agitprop, Les Films de l'Etranger拡大「金熊賞」を受賞したルーマニアのアディナ・ピンティリエ監督『タッチ・ミー・ノット』の一場面 (c) Manekino Film, Rohfilm, Pink, Agitprop, Les Films de l'Etranger

公開レターが望む「新しい出発」

2018年の第68回ベルリン国際映画祭のポスター
©Internationale Filmfestspiele Berlin/Velvet Creative Office
拡大2018年の第68回ベルリン国際映画祭のポスター (c)Internationale Filmfestspiele Berlin/Velvet Creative Office
 だがその裏では、別の興味深い騒動も起きている。それがドイツ人監督79人が署名をしたベルリン映画祭の「新しい出発」を願う公開レターだ。

 2017年11月末にドイツを代表するニュース週刊誌「シュピーゲル」のオンラインサイト上で公開されたことで、一気に騒動が広がった。ドイツ語であるが、ここから署名した監督の名前も見られる。

 今を時めくファティ・アキン(『女は二度決断する』)やマーレン・アデ(『ありがとう、トニ・エルドマン』)を筆頭に、フォルカー・シュレンドルフ(『ブリキの太鼓』)、マルガレーテ・フォン・トロッタ(『ハンナ・アーレント』)などの大御所、今回のベルリンのコンペティションで『Transit』を出品したクリスティアン・ペッツォルト(『東ベルリンから来た女』)ら、ドイツ映画の有力監督の名前が並ぶ。ちなみに今回、審査委員長を務めたトム・ティクヴァ(『ラン・ローラ・ラン』)はサインをしていない。審査委員長をすれば映画祭スタッフと密に顔を合わせるだろうから、少々バツが悪かったのかもしれない。

 さて、この公開レターが望む「新しい出発」とはどういうことか。 ・・・続きを読む
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筆者

林瑞絵

林瑞絵(はやし・みずえ) フリーライター、映画ジャーナリスト

フリーライター、映画ジャーナリスト。1972年、札幌市生まれ。大学卒業後、映画宣伝業を経て渡仏。現在はパリに在住し、映画、子育て、旅行、フランスの文化・社会一般について執筆する。著書に『フランス映画どこへ行く――ヌーヴェル・ヴァーグから遠く離れて』(花伝社/「キネマ旬報映画本大賞2011」で第7位)、『パリの子育て・親育て』(花伝社)がある。

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