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「わろてんか」が最終回しか笑えなかった理由

察するに「3つの方針」があり、結局はゼロになってしまい

矢部万紀子 コラムニスト

花束を手にする葵わかなさん=大阪市中央区のNHK大阪放送局拡大クランクアップして、共演者らから贈られた花束を手にする葵わかなさん=NHK大阪放送局

 親しい朝ドラ好き友だちと見解が一致したのだが、「わろてんか」で一番おもしろかったのは最終回だった。腹を抱えて、とは言わないが、クスクス笑いながら見た。

 朝ドラ好きの知り合いは彼女の他に何人かいるが、「わろてんか」については、私が把握しているだけで2人、「途中で見るのをやめた」と言っていた。理由はわかる。笑ってください=わろてんか、とタイトルで誘いかけているにもかかわらず、「わろてんか」は全然笑えなかった。だからと言って、泣けもしなかった。

 途中でやめることこそしなかった私だが、惰性で見ていたのであって、最終回も期待していなかった。そうしたら、笑えた。なんだ、できるじゃん。最初から、ずっとこんな感じでやればよかったのにね。これも、冒頭の彼女と一致した見解だ。

最終回は完全に吉本新喜劇

 と言っても、そう簡単じゃないことはわかっている。最終回がなぜおもしろかったのかというと、ドラマの中で「吉本新喜劇」が見られたからなのだ。

 未見の方のためにゆっくり説明するなら、最終回は戦後間もない焼け野原の大阪で、「吉本興業」をモデルとした「北村笑店」が再出発するため、お代を取らない「青空喜劇」を見せようということになり、そこで「北村笑店物語」と名付けた自分たちの歴史を描いた芝居を、急ごしらえの舞台で見せる。演じるのは芸人だけでなく、社長(=「わろてんか」のヒロイン・てん=葵わかな)以下、北村笑店にかかわる面々。素人も含め猛練習し、本番に。

 そんな展開で見せる青空喜劇・北村笑店物語の演出は、そっくり吉本新喜劇の演出法だったから、それは笑えて当たり前といえば当たり前なのだ。

 未見の方のために続けるなら、昨今ではNHKお抱え俳優のようになっている高橋一生の役名は「伊能栞」で、名前からしてカッコいい。不動産、鉄道、エンタテイメントを手がける伊能商会の社長で、阪急グループを思わせるわけだが、北村笑店の相談役でもある。青空喜劇の舞台では、てんの息子・隼也(成田凌)が伊能に扮している。

 隼也が登場、「北村笑店相談役の伊能です」とカッコよく言うと、広瀬アリス演じるところの美人漫才師リリコが「昨日は金曜日やー」と言う。すると、「『きのう』やなくて『いのう』です」と隼也がカッコよく訂正する。そこで、てん本人が演じるてんが舞台の上で、「あのー、きのうさん」とまじめな調子で割って入る――と、こんな感じだ。

 わかりやすくボケて、わかりやすく突っ込み、またボケて、みんなでガクッとする。完全に吉本新喜劇。最終回だからこその余興であって、ドラマ全体をこんな調子で作っていくわけにはいかないことは、私のようなドラマ制作の素人でもわかる。

「良し」にならなかった「方針」

 じゃあ、「わろてんか」をどんな調子で作るのか、それを考えるのがドラマ制作のプロなのに、一生懸命考えてなかったんじゃないかなあ。そう思う。

 考えたであろう方針のようなものは、なんとなくわかった。

 方針その1 笑いの殿堂・吉本興業の創業者のお話だし、笑いの要素はほしいよね。そうだ、笑える小芝居を、達者な役者で入れていこう→濱田岳、内場勝則、藤井隆らで実行。

 方針その2 ・・・続きを読む
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筆者

矢部万紀子

矢部万紀子(やべ・まきこ) コラムニスト

1961年生まれ。83年、朝日新聞社に入社。宇都宮支局、学芸部を経て、週刊誌「アエラ」の創刊メンバーに。その後、経済部、「週刊朝日」などで記者をし、「週刊朝日」副編集長、「アエラ」編集長代理、書籍編集部長などをつとめる。「週刊朝日」時代に担当したコラムが松本人志著『遺書』『松本』となり、ミリオンセラーになる。2011年4月、いきいき株式会社(現「株式会社ハルメク」)に入社、同年6月から2017年7月まで、50代からの女性のための月刊生活情報誌「いきいき」(現「ハルメク」)編集長をつとめた後、退社、フリーランスに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』(ちくま新書)。

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