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[1]実際の味よりも画面から発散するまずさ

青木るえか エッセイスト

家事えもん」と名乗るおじさんが、残り物始末のための料理レシピを紹介していた。

家事えもんさんは、当然芸名というか愛称であって、本名は松橋周太呂さん拡大「家事えもん」こと松橋周太呂さん=吉本興業の公式サイトより

 テレビに出てくる「食べ物」が気になる。

 ニュース、ワイドショー、バラエティから教養番組に至るまで、あらゆるところに「食べ物」は出てくる。

 目的としての食べ物、手段としての食べ物、刺し身のツマとしての食べ物、あらゆる食べ物がテレビ画面にはあふれかえっている。そんな中で、記憶にひっかかって忘れられない食べ物というのが出現する。この連載『テレビめし』でそういったテレビの食べ物をご紹介していきたいと思う。

とろろが象徴してたエロ度合い

 まず、「テレビに出てきた記憶にひっかかる食べ物」とはどういうものか説明するためにひとつご紹介したい。

 もう30年以上前、『テレビ三面記事 ウィークエンダー』という番組があった(日テレ系)。当時の人気番組でありいわゆる俗悪番組の扱いで、事件の再現フィルムというのが目玉になっていた。

 ただの事件の再現ではない。痴情事件の再現だからエロ場面が挿入される。エロといったって女のおっぱいが見えるという程度のことだが、当時、地上波で乳首まで見えるなんていうのはめったにないことで、エロに興味しんしんの子供がなんとか見ようとして親に追い払われる、なんとか親が早く寝てくれないものかと願った、というような時代であった。今はスマホで中身まで丸見えのエロ動画など見られるから今の子供はほんとうに幸せだ。……そんなことはどうでもいい。

 その再現フィルムで、若い女の子に売春させてたという事件をやった。もちろん眼目はエロ場面。で、若い女の子を買うのがバーコード頭のじいさん。じいさんなので精力つけないと若い女の子と渡り合えない、と「小鉢のとろろに卵を割り入れてチャッと醤油をいれ、ハシでが―っとかきまぜたやつ」を、小鉢から直接ずるずると飲み干して、サルマタ一丁で若い子にキスするという場面。

 このとろろが私はもう忘れられない。

 うまそうだったというわけではない。じゃあまずそうというわけでもなく、それは明らかに食べ物であるにもかかわらず、まるで ・・・続きを読む
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筆者

青木るえか

青木るえか(あおき・るえか) エッセイスト

1962年、東京生まれ東京育ち。エッセイスト。女子美術大学卒業。25歳から2年に1回引っ越しをする人生となる。現在は福岡在住。広島で出会ったホルモン天ぷらに耽溺中。とくに血肝のファン。著書に『定年がやってくる――妻の本音と夫の心得』(ちくま新書)、『主婦でスミマセン』(角川文庫)、『猫の品格』(文春新書)、『OSKを見にいけ!』(青弓社)など。

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