メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

ミュージカル『メリー・ポピンズ』公演レポート

ステージだけが作れるマジック! 濱田めぐみ、平原綾香がメリーを好演

大原薫 演劇ライター


拡大ミュージカル『メリー・ポピンズ』公演から

 世界中の人たちを魅了するミュージカル『メリー・ポピンズ』。待望の日本人キャストによる初演が現在、東急シアターオーブにて上演中だ(5月7日まで。5月19日から6月5日まで大阪・梅田芸術劇場メインホールにて上演)。

 伝説のナニー(子守)メリー・ポピンズが、家族関係がしっくりいかないバンクス一家に奇跡を起こす物語。舞台で繰り広げられるマジックに、大人も子供も自然と心が浮き立ってくる。

子供のために書いたことは一度もない

 ミュージカル『メリー・ポピンズ』の原作は、P.L.トラヴァースの小説。同作を原作として1964年に公開されたディズニー映画『メリー・ポピンズ』は、実写とアニメーションを融合させ、心躍るミュージカルナンバーとジュリー・アンドリュースやディック・ヴァン・ダイクら実力派キャストの好演で、アカデミー賞5部門を受賞した傑作。「チム・チム・チェリー」「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」などの名曲は、誰もが一度は耳にした記憶があるだろう。

 『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』『キャッツ』などを生み出した名プロデューサー、サー・キャメロン・マッキントッシュが『メリー・ポピンズ』に魅了され、舞台化を熱望。トラヴァースとの長年の交渉の末、ついに実現した本作は、映画のミュージカル化ではない。原作小説とシャーマン兄弟による映画の名曲から新たなミュージカルが生み出されたのだ。2004年にロンドンで初演、2006年よりブロードウェイで上演され、その後世界各国で上演されている。

 「子供のために書いたことは一度もない」

 とトラヴァースは言っていたそうだ。トラヴァースのスピリットを汲むこのミュージカルは子供が見ても楽しいが、琴線に触れるのは大人たちだろう。マジックなんてすっかり忘れてしまった大人たちが客席に座り、目の目に繰り広げられるマジックに心奪われるうちに、明日への活力が湧いてくる。このミュージカルにはそんな前向きなエネルギーに満ち溢れていた。

巨大なセットは、まるで飛び出す絵本

拡大ミュージカル『メリー・ポピンズ』公演から

 舞台は20世紀初頭のロンドン。銀行家のジョージ・バンクス(駒田一/山路和弘のダブルキャスト)は仕事人間で妻のウィニフレッド(木村花代/三森千愛のダブルキャスト)や子供のジェーン(浅沼みう、岡菜々子、亀山めい、渡邉おとはのクワトロキャスト)、マイケル(大前優樹、加藤憲史郎、竹内彰良、坂野佑斗のクワトロキャスト)のことも放りっぱなし。いっこうにナニーがいつかないぎくしゃくした一家のもとに、風に乗ってメリー・ポピンズ(濱田めぐみ/平原綾香のダブルキャスト)が現れる。不思議な魔法の力を発揮するメリーに子供たちは大喜び。煙突掃除屋のバート(大貫勇輔/柿澤勇人のダブルキャスト)と共に楽しい時間を過ごすが、ジョージは銀行での取引の失敗で、苦境に立たされてしまう。しかし、逆にその出来事がきっかけでジョージは子供の頃の気持ちと家族との絆を取り戻す。

 観客の眼前で繰り広げられるのは、魔法のように鮮やかな世界。作品冒頭、バンクス一家の巨大なセットが、まるで飛び出す絵本のように立体的に展開していく様子から、早くもワクワクさせられる。子供たちがメリーと共に公園に降り立つと、グレーの色調だった公園が色とりどりの華やかな空間に早変わりする(「最高のホリディ」)。舞台美術・衣装デザイナーのボブ・クロウリーはさながら「色彩の魔術師」だ。筆者は2004年のロンドン初演と2006年から始まったブロードウェイ上演での『メリー・ポピンズ』を観劇しているが、そのときと比較すると今回は舞台美術など様々な場面で手を加えられ、ブラッシュアップされていることを感じた(オリジナル演出はリチャード・エア、日本プロダクション演出はジェームス・パウエル)。演出を固定させるのではなく、初演以降、世界各地での公演でよりよいものを目指して手を加えられてきた成果が、今回の日本公演で最大限に発揮されているのだろう。

◆公演情報◆
ミュージカル『メリー・ポピンズ』
2018年3月25日(日)~5月7日(月) 東京・東急シアターオーブ
2018年5月19日(土)~6月5日(火) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
●大阪公演のファミリーチケット&U-25チケット発売中
・販売期間:2018年4月19日(木)~5月7日(月)
・詳細はこちら
[オリジナルクリエイティブスタッフ]
原作:P.L.トラヴァース
オリジナル音楽/歌詞:リチャード・M・シャーマン、ロバート・B・シャーマン
脚本:ジュリアン・フェロウズ
追加音楽/歌詞:アンソニー・ドリュー、ジョージ・スタイルズ
演出:リチャード・エア
共同演出/振付:マシュー・ボーン
共同振付:スティーヴン・メア
日本版演出:ジェームス・パウエル
振付翻案:ジェフリー・ガラット
音楽スーパーヴァイザー:スティーヴン・ブルッカー
[出演]
濱田めぐみ/平原綾香、大貫勇輔/柿澤勇人、駒田一/山路和弘、木村花代/三森千愛、島田歌穂/鈴木ほのか、コング桑田/パパイヤ鈴木、浦嶋りんこ/久保田磨希、小野田龍之介/もう中学生 (以上ダブルキャスト) ほか
公式ホームページ
★柿澤勇人インタビュー記事はこちら

・・・続きを読む
(残り:約1338文字/本文:約3485文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。
Journalismの記事も読めるのは全ジャンルパックだけ!


筆者

大原薫

大原薫(おおはら・かおる) 演劇ライター

演劇ライターとして雑誌やWEB、公演パンフレットなどで執筆する。心を震わせる作品との出会いを多くの方と共有できることが、何よりの喜び。ブロードウェー・ミュージカルに惹かれて毎年ニューヨークを訪れ、現地の熱気を日本に伝えている。

大原薫の新着記事

もっと見る