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スタジオライフ演出家、倉田淳インタビュー/上

ジョー・クリフォード版『アンナ・カレーニナ』日本初上演

真名子陽子 ライター、エディター


拡大上段左から、笠原浩夫、岩﨑大/下段左から、久保優二、倉田淳、石飛幸治=冨田実布撮影

 劇団スタジオライフが5月26日からレフ・トルストイ原作の『アンナ・カレーニナ』を上演する。今回上演するのは2005年にイギリスで初演、その後も上演を重ねているジョー・クリフォード版で、日本初上演となる。

 『アンナ・カレーニナ』の舞台は1870年代の帝政ロシア。政府高官カレーニンの妻アンナ・カレーニナは、恵まれた華やかな生活を送っていたが、若い貴族の将校ヴロンスキーと出会い、お互いに惹かれていく。夫への愛情が冷めた生活の中で、ヴロンスキーとの距離は縮まっていき、夫カレーニンとヴロンスキーとの狭間で揺らいでゆくアンナ。そしてアンナを取り巻く人たちも悩み多き日々を過ごしていた。さまざまな人生模様が刻まれていく中、アンナは選択を迫られるが……。

 スタジオライフ演出家の倉田淳に話を聞いた。今回の上演に至った経緯や、この作品を通して伝えたいこと、登場人物の解釈やキャスティングについて、そして翻訳の難しさなど、演出家からの目線でたっぷりと語ってくれた。(※石飛幸治、笠原浩夫、岩﨑大、久保優二のインタビューは5月19日・20日に掲載いたします)

ジョーさんのオリジナルがちりばめられている

――今回上演される『アンナ・カレーニナ』は、『GREAT EXPECTATION—大いなる遺産—』(2014年スタジオライフで上演)を書かれたジョー・クリフォードさんの戯曲です。

 原作の『アンナ・カレーニナ』は長編作品で、新訳で4冊になります。この長さをどうされるんだろうと思っていました。『GREAT EXPECTATION—大いなる遺産—』は原作に準じていたのですが、『アンナ・カレーニナ』はジョーさんのオリジナルがいろいろちりばめられています。

――オリジナルというのは?

 状況です。アンナの娘は養女という設定になっていたりするんです。原作では実の娘なんです。

――なるほど。

 アンナの夫、カレーニンが離婚してくれないから恋人のヴロンスキーと結婚できないし、でも離婚をしてくれと言って頭を下げるのは自分のプライドが許さないし、離婚してしまえば息子のセリョージャを永遠に失ってしまう。すごく苦しい思いを抱えて、社会からは不倫女ということで爪弾きにされて、そんな出口がない中、養女をもらってくるんです。だけど、慰められるかというと決してそうではなく、ますます孤独は募り、自責の念に駆られていく辛さがひしひしと伝わってくるんです。原作でも養女は登場するのですが設定を変えてあります。原作にあるアンナという自分と同じ名前を付けた実の娘は登場させず、養女に独自の設定を置くことで、アンナの心情をギュッと凝縮して表しているのは、ジョーさんの手腕だと思いました。

劇場の硬質な雰囲気に『アンナ・カレーニナ』だと

――今回、『アンナ・カレーニナ』をスタジオライフで上演しようと思ったのはなぜですか?

 『GREAT EXPECTATION—大いなる遺産—』を2014年に上演させて頂いた時に、ジョー・クリフォードさんはすごい方だなと思ったんです。あの長い小説のエッセンスをギュッと詰め込んで2時間40分の戯曲にされました。もし、自分がしていたら4時間はかかるなと思いましたね。本当に大事なものは何なのかということがひしひしと伝わってきて、この凝縮の仕方はすごいなと思ったんです。その時に『アンナ・カレーニナ』の戯曲もあると翻訳家の阿部のぞみさんから聞いて、読みたい読みたいって言ってたら、ジョーさんが『アンナ・カレーニナ』を持ってきて下さいました。それを訳してもらったのですが、難しくてどうしようかなあと思っていたんです。

 それが昨年、あうるすぽっと(劇場)へ申し込もうと思った時に、何の作品を持っていったらいいかなあといろいろ考えたんです。その劇場で何を上演するかはとても大事なので。前回は萩尾望都先生の『11人いる!』をやらせて頂いたので、今回はどうしようかな、あの空間には何だろうなと思って。あの硬質な感じとあまり体温がない雰囲気に、「これは『アンナ・カレーニナ』だ!」と、ピンっと思ったんです。

――それで今回、実現したんですね。

 でも、実現させるのは大変です(笑)。

◆公演情報◆
スタジオライフ公演『アンナ・カレーニナ』
2018年5月26日(土)~6月10日(日) 東池袋・あうるすぽっと
公式ホームページ
[スタッフ]
原作:レフ・トルストイ
脚本:ジョー・クリフォード
翻訳:阿部のぞみ
演出:倉田淳
[出演]
石飛幸治、笠原浩夫、楢原秀佳、山本芳樹、曽世海司、岩﨑大、船戸慎士、関戸博一(иチームのみ出演)、仲原裕之、宇佐見輝、久保優二、千葉健玖、吉成奨人、伊藤清之、鈴木宏明、前木健太郎/藤原啓児
※и(イー)チームとс(エス)チームのダブルキャスト公演
〈倉田淳プロフィル〉
東京都出身。1976年、演劇集団「円」演劇研究所に入所。第1期生。芥川比呂志に師事。氏の亡くなる1981年まで演出助手をつとめた。1985年、河内喜一朗と共にスタジオライフ結成、現在に至る。劇団活動の他、1994年より西武百貨店船橋コミュニティ・カレッジの演劇コースの講師を務めた。また英国の演劇事情にも通じており、その方面での執筆、コーディネーターも行っている。

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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