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伊礼彼方インタビュー(下)

時代の変化に合わせて自分を変えていかなきゃ

真名子陽子 ライター、エディター


伊礼彼方インタビュー(上)

でも俺は、我慢してこの仕事をやっていないんだよ

拡大伊礼彼方=森 好弘撮影

――ここ数年を振り返っていかがですか?

 演劇に限らず、時代に合わせていくことはとても大事なことだと感じます。世の中はどんどん変わっていくじゃないですか。変化に応じて自分を変えていかなきゃいけないなと思います。もちろん過去の良さを失ってはいけないと思うんですけどね。

――変わることを恐れちゃいけないなと思います。

 ですよね。どんどん変化していかなきゃいけないんです。今年の3月にファンクラブを解散して、ホームページをリニューアルしました。まずは伊礼彼方の記録はここを見ればすべてわかる、というサイトを作りたいなと思ったんです。初めて伊礼彼方を知った人が見ても、どういう経歴を辿ってきた人なのかがわかる、自分史のような(笑)。ファンクラブがなくなることで、残念ですと言われたりしましたけど、ファンとの関係がこれで終わってしまうわけではなく、ファンクラブ内だけで行うイベントやアナログの会報誌だったり、一方通行の閉鎖的な環境ではなくて、もっと新しい形はないかとつねに模索してます。アナログの良さももちろんありますけど、そもそも仕事の質がアナログじゃないですか。舞台という生もの。それを大事にするために舞台以外のことはデジタル化して、アナログでは伝えきれなかった情報発信をできるようにしました。まだまだ改良の余地はありますが、より多くの方々に楽しんでもらえたらと思ってます。

――自分の主軸をどこにもっていくかですね。役者さんは舞台ですもんね。

 そうなんです。ファンの方になくすことや変わることは怖くないんですか?ってよく聞かれるんです。でも僕、逆なんですよ。止まるほうが怖いんです。常に歩いてなきゃダメなんですよね。もちろん、立ち止まって振り返ることは大事ですけど。

――一瞬でいいですよね、立ち止まることは。

 そうそう。根本さえ変わらなければ形はどんどん変えてもいいと思うんです。この2、3年くらいそんなことを考えていました。

――そうなんですね。

 そんな中、たくさんの作品と出会って、人として役者として、いろいろ勉強させて頂きました。

――作品ごとにいろいろ感じることがあったんですね。

 そうですね、反省もたくさんありました。自分が正しいって思うこともあれば、やり方が間違ってたのかな、自分が突っ走りすぎたかなっていうこともありましたしね。今後の自分にとって財産となる期間だったなとも思います。

 そうやっていろんな作品に携わって思ったんですけど、100人に好かれようなんて無理なんですよ。みんなに好かれたいと思ってやってるわけではないんですけど、でも、わざわざ嫌われる行為をしなくてもいいじゃないですか。でも、こちらから線を引かなきゃいけないこともあるなって思いました、最近。

――線を引くというのは?

 すみませんけど、僕はその考え方ではないです、ジャンルが違いますと。僕はこういうジャンルですって示していかなきゃいけないなって思いました。

――ジャンルというのは、嗜好?

 嗜好のジャンルです。わかりやすく言えば、宝塚的な芝居が好きな人、2.5次元的な芝居が好きな人、リアルな芝居が好きな人というジャンル。今までいろんな作品に出させて頂いて、すべて勉強だと思ってやってきましたけど、ここにきてやっぱり違うものは違うなって思い始めたんですよね。嗜好がハッキリしてきたんです、自分の中で。ジャンルが違う作品に出ると、自分自身を保てなくなるというか、自分のやりたいことが表現できなくなってストレスを抱えるようになったんです。もう自分の中でハッキリしなきゃいけない時期がきたのかなって思うんですよ。

――表現ができないのは役者にとって致命的ですね。

 それも勉強だと思ってやってきたんです。実際、勉強になりましたし、引き出しは増えたんですけど、最近、本当にストレスを感じるようになりました。自分自身を裏切っている感じもするしね。それも仕事だ、みんなそれなりに我慢してやってるんだって言われてもね……。でも俺は、我慢してこの仕事をやっていないんだよって思う。

自分を養わなきゃいかん!と思ったから……

拡大伊礼彼方=森 好弘撮影
――変わることを恐れないという話になりますね。

 そう、恐れないということです。そう思っている人は変わっていけばいいと思うし、変わることを怖いって思うんだったら、とことん自分の形を守っていけばいいと思う。それは否定しません。だから否定せずに、自分は自分だということをもうちょっと強くアピールしていかなきゃいけない時期がきたのかなと思いました。レミゼに受かったのも自分のそういった信念が伝わったんじゃないかなと思います。

――すごいタイミングですね。

 うん。昨年やった『ビューティフル』という作品も、自分ではひとつのチャレンジだったんです。帝国劇場でリアルな芝居をしても伝わるわけがないっていうのが多くの声だったんですけど、そんなことはないと僕はずっと思い続けていて、いつかできると思ってました。それが叶って、やっぱり自分は自分を信じるしかないんだなと。周りのそういった意見はたぶん、間違ってはいないんだろうけど、その人にはやる勇気がないってだけなんだろうなって捉えるようにしたんです。

――そう思えるようになったら、少し楽になりますね。

 楽になりました。今まで自分の中で一緒くたにしていましたね。役者のスタイルはみんな一緒で、同じ演劇、ミュージカルの中で生きていく人間だと思っていたんですけど違うんだなと。だから衝突しちゃったり、自分の正義を守ろうとした結果、人を傷つけたり傷つけられたり、くだらない争いをしてたんだなって思います。

 大人にならなきゃいけないな…というか、人を傷つけちゃいけないなって思います(笑)。傷つけているつもりがある人とない人がいて、受け取る人も冗談として受け取る人と傷つけられたと受け取る人がいて。本当、自分を養わなきゃいかん!と思った(笑)。だから、武道をやろうと思ってるんです。精神修行をしようと思って。

――武道? 何をやるんですか?

 空手や少林寺拳法、合気道と、いろんな道場を見てまわってるんです、今。柔道や剣道、空手はケガしたら危ないなあとか思ってるんですけどね。

――精神統一するものですね。

 そうです。精神的に一番良いって言われてるのが少林寺拳法と合気道かな。もう一度、道場をのぞいて決めようかなと思っています。あまりにもこだわりが強いんですね。自分は正論を言ってると思っているんだけど、人がついてこないというか、こられないというか……。もちろん同じような思いを持っている人たちとは話がすごく合うんですよ。

――いろんな状況の中で異議を唱えたいと思ってる人はいるんでしょうけどね。

 思ってても言わなかったら、それは思ってるとは言わないんですよ。先輩にもたくさんいますよ。「そうだよなあ、俺もそう思うんだよ。彼方が言ってくれよ」……「えっ???」

――それはちょっと違いますね。

 結局、自分が言うんですけどね。その人のために言うんじゃなくて、自分のために言ってるだけなんです。おかしいんじゃないかなと思う状況が、いい方向に変わってほしいなと思って。

◆伊礼彼方 出演舞台◆
●ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』
2018年9月7日(金)~10月3日(水) 東京・シアタークリエ
2018年10月8日(月・祝) 秋田・大館市民文化会館
2018年10月11日(木)~10月12日(金) 岩手・岩手県民会館
2018年10月17日(水)~18日(木) 愛知・日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
2018年10月24日(水)~28日(日) 大阪・新歌舞伎座
2018年11月3日(土)~4日(日) 福岡・久留米シティプラザ ザ・グランドホール
公式ホームページ
●ミュージカル『レ・ミゼラブル』
2019年4月~5月 東京・帝国劇場 ほか全国公演あり
公式ホームページ
〈伊礼彼方プロフィル〉
沖縄県出身の父とチリ出身の母の間に生まれる。中学生の頃より音楽活動を始め、ライブ活動をしていたときにミュージカルと出会う。最近の主な出演作は、『ロマーレ』『TENTH』『ビューティフル』『王家の紋章』『お気に召すまま』『サバイバーズ・ギルト&シェイム』『あわれ彼女は娼婦』『グランドホテル』など。
伊礼彼方official web site

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筆者

真名子陽子

真名子陽子(まなご・ようこ) ライター、エディター

大阪生まれ。ファッションデザインの専門学校を卒業後、デザイナーやファッションショーの制作などを経て、好奇心の赴くままに職歴を重ね、現在の仕事に落ち着く。レシピ本や観光情報誌、学校案内パンフレットなどの編集に携わる一方、再びめぐりあった舞台のおもしろさを広く伝えるべく、文化・エンタメジャンルのスターファイルで、役者インタビューなどを執筆している。

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