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【公演評】月組『THE LAST PARTY』

月城かなと、秘められた情熱がほとばしる。ドラマシティ初主演で栄光と挫折の小説家に

さかせがわ猫丸 フリーライター


拡大『THE LAST PARTY』公演から、スコット役の月城かなと(右)とゼルダ役の海乃美月=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 月組公演、Musical『THE LAST PARTY ~Fitzgerald’s last day~』フィッツジェラルド最後の一日 が、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演されました。アメリカ文学を代表する小説家スコット・フィッツジェラルドの波乱に満ちた人生を描いたこの作品は、2004年に宙組・大和悠河さん、月組・大空祐飛さん主演で2組連続上演され、大好評を博しました。14年の時を経て再演に挑むのは、昨年、雪組から月組に組替えし、ますます勢いが増す月城かなとさん。待望のドラマシティ初主演で、初の東京進出となりました。

 スコット・フィッツジェラルドがたどった、人生の絶頂から転落への軌跡。ストレートプレイを思わせる膨大なセリフと演技が、そのまま物語の完成度を左右しそうなこの作品。クールな月城さんの秘められた情熱がほとばしり、大きな成長と存在感を示した舞台となりました。

月城の緊迫感高まる演技

拡大『THE LAST PARTY』公演から、スコット役の月城かなと=岸隆子(Studio Elenish)撮影

 1940年12月21日。ハリウッドにあるアパートメントの一室では、心臓に爆弾を抱えたスコット・フィッツジェラルドの命の灯が、まもなく燃え尽きようとしていた。その時まで、残りあと2時間――。

 月城さんは、スコット自身でありながら、彼がここにたどり着くまでの人生を、この2時間で客観的に振り返りながら語るという、少し珍しい手法で始まります。

――アメリカの田舎町で貧しい暮らしを送るスコット(月城)は、偉大な作家になる夢と野望に燃えていた。そして1920年、ついに編集者マックスウェル(悠真倫)に認められ、処女作『楽園のこちら側』が大ヒット。憧れのゼルダ(海乃美月)とも結婚し、成功、名声、ロマンスを一度に手に入れた。だが次第に、大衆受けする作品を増産することと、芸術作品を書きたい本音との葛藤に苦しむようになり、連夜のパーティーで酒浸りの生活にも疲れ、ゼルダとの間にもすれ違いが生じ始めていた。

 花の95期生を代表する一人・月城さんは、端正な容姿の正統派男役。和物も似合う落ち着いたキャラクターが魅力ですが、前回の大劇場公演のショー『BADDY(バッディ)-悪党(ヤツ)は月からやって来る-』ではコミカルな一面を見せるなど、演技力も着実に高めてきました。

 センターパーツのオールバックにしたブロンドの髪と、黒いタキシードやトレンチコートの着こなしは、それだけで絵になりそうなほど美しい。作品のイメージになっている赤いバラ一輪が憎いほど似合っていて、大人の男役としての貫禄も申し分ないでしょう。

 純粋でまっすぐなスコットの熱意と才能は、出版社を動かし、憧れの恋人も手に入れ、アメリカンドリームへとつながりました。しかし、そんな甘美な時も束の間。お金を稼ぐには本意でない仕事もしなければいけません。このあたりの現実感には、リアルな生活体験として共感できそうなだけに、ひりひりとした痛みが伝わってきます。

 富と名声を浴びる日々から、少しずつ何かが崩れていく――緊迫感が高まっていく月城さんの演技に、客席も引き込まれていきました。

◆公演情報◆
Musical『THE LAST PARTY ~Fitzgerald’s last day~』
フィッツジェラルド最後の一日
2018年6月14日(木)~ 6月20日(水) 東京・日本青年館ホール
2018年6月30日(土)~ 7月8日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
公式ホームページ
[スタッフ]
作・演出:植田 景子

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筆者

さかせがわ猫丸

さかせがわ猫丸(さかせがわ・ねこまる) フリーライター

大阪府出身、兵庫県在住。全国紙の広告局に勤めた後、出産を機に退社。フリーランスとなり、ラジオ番組台本や、芸能・教育関係の新聞広告記事を担当。2009年4月からアサヒ・コム(朝日新聞デジタル)に「猫丸」名で宝塚歌劇の記事を執筆。ペンネームは、猫をこよなく愛することから。

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