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GoToトラベルではなく「ゲリラ旅行」でしか観光業は救えない

観光業支援と感染拡大防止との両立という難題が安倍政権に解けるのか

勝部元気 コラムニスト・社会起業家

 政府によるGoToキャンペーンの第1弾として「GoToトラベル」が2020年7月22日から始まりました。数々の批判が噴出し、朝日新聞の世論調査では、74%にも及ぶ「反対」があるにもかかわらず、安倍政権は一部修正した上で断行した形です。

 この政策はあまりに多くの問題点があるため、ここで全てに言及することは不可能ですが、批判されている点は主に以下3点のように思います。

(1)詳細が直前まで不明なままで、方針も二転三転して混乱を招いている点
(2)観光業や飲食業等、キャンペーンを通じて特定の業界に約1.7兆円も資金投入する不公平さ
(3)キャンペーンによる感染拡大のリスクを十分に考慮しているとは思えない点

マスクをつけ新幹線に乗り込む家族連れ=2020年7月23日午前9時21分、JR東京駅

GoToトラベルは始まったが……=2020年7月23日、JR東京駅

こんなに方針が二転三転する政権を見たことない

 まず、直前まで制度設計の概要が不透明なままであったこと、突然の開始時期前倒しや東京除外、キャンセル料の補償の方針転換、実施前日の業界への説明会等、政府のあまりに稚拙な運営ゆえに、現場の混乱が続いています。東京除外によってキャンセルが相次ぎ、対応に追われた旅行会社が“タダ働き”になってしまったケースも多々ありました。

 確かに、コロナ禍という前代未聞の対応に追われている中では、その時の医療や経済の状況に応じて、対策が朝令暮改になることも場合によっては致し方ないとは思います。それゆえ、朝令暮改自体は否定しません。

 ですが、対象をかなり絞り込んだ30万円の給付金案にせよ、今回のGoToキャンペーンにせよ、発案当時から否定的な意見が多かったにもかかわらず、強行しようとしては批判が続出し、結局は一部変更を余儀なくされることが続いている始末です。

 つまり、これは「状況に応じた対応の変更」とは異なり、「状況を把握できなかった自分たちに原因がある変更」です。約8年続く安倍政権では、国民の多数が反対する政策を強行することは何度もありました。ですが、これまでにない大きなお金を扱うコロナ危機時にも同様のことを繰り返しており、政権担当能力に疑問を持たざるを得ません。きっとこの先もまた批判を受けた突然の変更があることでしょう。

どうして「GoToレッスン」はしてくれないの?

 2つ目に、GoToキャンペーンの予算が約1.7兆円にも及ぶことから、観光業等の特定業界だけが特別視されていると感じる人も少なくありません。医療機関ですら、3分の2が赤字に転落しているものの、2次補正予算での経営支援策は365億円で、無担保・無利子融資の拡充が中心であることから、観光業等の厚遇ぶりが分かります。

 この巨額キャンペーンの対象になっているのは、第1弾の観光業に加えて、外食産業・イベント・商店街ですが、客足が遠のいて苦境に陥っているのは、その4つの業界・産業だけでしょうか?

 たとえば、スポーツジム、デイサービスを提供する福祉施設、習い事教室等、様々な業界・産業で、多くの事業者が経営危機に陥っています。ですが、GoTo ジム、GoTo デイサービス、GoTo レッスン等のキャンペーンは行っていません。確かに、外食産業と宿泊業の倒産件数は多いようですが、なぜ、4つの業界・産業とそれ以外で線引きをするのか、政府からの明確かつ合理的な説明もなく、とても不公平です。

ランニングマシンなどの間に設置されたパーティション=2020年5月31日午後、兵庫県尼崎市感染対策をとっても会員が減ったスポーツジムも少なくない

 もし、絞るのであれば、たとえば

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