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森摂
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知事連合は電力の中央集権・地域独占を打ち破るか

2011年05月28日

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 「自然エネルギー協議会」の立ち上げを宣言する記者会見が5月25日、都内で開かれた。その場に足を運んだ私は、大げさに言うと、「歴史の転換点」を目撃しているのではないかとさえ思えた。

 福島第一原発事故を受けて、エネルギー政策の見直しや自然エネルギー推進を提唱する動きは当然だ。

 しかし、その主役たちが19道府県の知事(多数は代理出席)、地方行政のトップたちだったところに、このイベントの最大の意味がある。

 記者会見の壇上には、埼玉県の上田清司、神奈川県の黒岩祐治、長野県の阿部守一、静岡県の川勝平太という知事4氏、三重県と秋田県の副知事が並び、そして右端にはソフトバンクの孫正義社長が座った。

 そこにエネルギー政策をつかさどる経済産業省・資源エネルギー庁の幹部や、国会議員たちの姿はなかった。

 経産省の官僚たちはこの記者会見を見て、何を感じただろうか。

 「中央集権的なエネルギー政策がひっくり返される」という恐怖を感じただろうか。あるいは「知事たちがいくら集まっても、電力は俺たちが握っている」と鼻で笑っただろうか。

 孫社長はこれに先立つ23日、参議院の行政監視委員会で、耕作放棄地に太陽光発電パネルを仮設して電力不足を補う「電田(でんでん)プロジェクト」の実施を提案した。

 孫氏はこの計画について「耕作放棄地の2割の面積に太陽光パネルを設置することで、原子力発電分の電力を賄うことが可能。電力需要ピークへの対策になる」と説明。「使われていない土地を国難の時に使うべき」と訴えた。

 また、原子力発電について「10年後には少なくとも電力依存を現在の半分程度に減らさざるを得ない」とした上で「向こう10年間で総発電量に占める自然エネルギーの割合を10%から30%に増やすべき」と語り、「欧州並みに充実した自然エネルギーの固定価格買取制度の法律を今国会で成立してほしい」との考えを示した。

 これまで経産省と電力各社は、電気事業法のもと、日本に強固な電力系統を築いてきた。

 だが、その系統は中央集権的なものであり、今回の福島原発の事故で、県ごとのエネルギー安全保障体制がいかに脆弱なものかを、各自治体は思い知らされた。

 例えば静岡県の東部は、福島第一原発から200キロ以上離れているにもかかわらず、東京電力の送電地域であったため、計画停電に組み込まれた。県知事といえども、異論をはさむ余地はなかった。

 25日の記者会見では、「エネルギーの自立・分散」という言葉が何度も知事たちの口から出た。

 長野県の阿部知事は「地域のエネルギーを活用すれば、地域の安定・安全につながる」と強調した。

 協議会では、各県に20メガワットのソーラー発電所をソフトバンクの負担で設置し(土地は各県が供出)する予定だ。長野県の試算によると、20メガワット(約5000世帯分)のメガソーラーで長野県内の77市町村のうち48町村の電気需要を賄えるという。

 この自然エネルギー協議会には26日、関西広域連合の7府県が合流。自然エネルギー協議会のメンバーは26道府県となり、全国47都道府県の半数以上を占める一大勢力となった。

 さらに今後、福島第一原発事故の処理を巡って、発送電の分離、電力自由化の議論が必ずやってくる。発送電の分離は、自然エネルギーのシェア拡大のためには必要条件といえる。

 各電力会社は日本へのスマートグリッド導入を嫌がっていた。スマートグリッド化が進むと、自然にマイクログリッド化(地域ごとの送電網管理)が進む。そうなれば、「エネルギーの地産地消」が実現する。

 この日の協議会旗揚げが「日本のエネルギー政策の大転換点」となるか。その帰趨は誰にも分からないが、そうなる可能性は決して低くない。

 この記事は「オルタナ・オンライン」にも掲載された。ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアで多くの反応があったが、コメントの一つに下記のような書き込みがあった。

 「エネルギーの地方分権ともいえる素晴らしい動き。ただ耕作放棄地の利用については、食料自給率の底上げについても同時に考慮する必要があると思います。良記事です」

 この指摘の通り、耕作放棄地を太陽光発電所に転換するにあたっては、食糧安全保障の観点からも検討する必要があるのは言うまでもない。

プロフィール

森摂(もり・せつ)

環境とCSRと志のビジネス情報誌「オルタナ」編集長。東京外国語大学スペイン語学科を卒業後、日本経済新聞社入社。 流通経済部などを経て1998年-2001年ロサンゼルス支局長。2002年9月退社。同年10月、ジャーナリストのネットワークであるNPO法人ユナイテッド・フィーチャー・プレス(ufp)を設立、代表に就任。2006年9月、株式会社オルタナ設立、編集長に就任、現在に至る。主な著書に『ブランドのDNA』(日経ビジネス、片平秀貴・元東京大学教授と共著、2005年10月)など。訳書に、パタゴニア創業者イヴォン・シュイナードの経営論「社員をサーフィンに行かせよう」(東洋経済新報社、2007年3 月)。

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