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ドイツの電子書籍業界は共同開発に転換

アマゾンの対抗軸として構想

植村八潮 専修大学文学部教授

 2013年3月にサービスを開始したドイツの電子書籍端末「tolino(トリノ)」の販売が好調という。昨年暮れに、アマゾン「kindle(キンドル)」のシェアを上回ったというニュースが伝わってきて、世界の電子出版関係者の耳目を集めた。

 「トリノ」は、ヨーロッパ最大の電話通信会社ドイツテレコムと大手書店4社(タリア、ウィルトビルド、フーゲンドーベル、ベルテルスマンのブッククラブ)が始めた共同プロジェクト名でもあり、明確にアマゾンの対抗軸として構想されている。

 さらに昨年10月初旬に開催されたフランクフルトブックフェアで、ドイツ最大手取次であるリブリが、独立系書店およそ千店を束ねる形で、トリノプロジェクトに参加することが発表された。これによって独立系書店も電子書籍ビジネスに参加できることになり、個人書店の救世主的な扱いを受けている。

 筆者は、ちょうどこのとき、欧州の電子書籍事情を調査するためドイツを訪問していたこともあり、ブックフェア会場でドイツテレコムのトリノ担当者クラウス・レンクル氏にヒアリングすることができた。

 ドイツのナショナルチームとも呼べる電子書籍連合は、どのような経緯で成立し、スタートダッシュに成功したのか。そもそもアマゾンのシェアを追い抜いたというが、具体的にどのようなことなのか。ドイツの電子書籍事情とあわせて報告する。

 トリノ誕生の背景には、ドイツ国内企業の電子書籍ビジネスが、それまでうまくいっていなかったことがある。

 日本と同様にドイツでも10年に電子書籍ブームがやってきた。この頃、のちにトリノアライアンスに加わった各企業も相次いで電子書籍ビジネスに参入している。ベルテルスマングループやドイツテレコムは、

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