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ヤフー・ニュースの持続的発展には

ユーザーの信頼の蓄積こそが重要

片岡 裕 ヤフー株式会社メディアカンパニー・ニュース事業本部本部長

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 ここ数年、メディアを取り巻く環境は劇的に変化している。きっかけは、「ソーシャルメディアの成長」と「スマートフォンの普及」である。

 この二つが、ユーザーにコンテンツが届くまでの「コンテンツ制作・編成・流通」のプロセスを変化させ、ユーザーの行動そのものを変え、ビジネスの領域にも大きな影響を与え続けている。

組織から個人へのパワーシフト

 本稿では、サービス提供側の視点から、これらの変化による影響とヤフー・ニュースの取り組みを紹介したい。

 「ソーシャルメディアの成長」は、〝組織から個人へのパワーシフト〟を引き起こした。ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアは、個人の情報発信のハードルを劇的に引き下げるとともに、個人発のコンテンツ同様に、メディアによるコンテンツもコメントなどの反応とセットで「人」から「人」へ流通させて、自社のプラットフォームへ流し込む仕組みを生み出した。

 その結果、ユーザーの情報消費行動の起点として、ソーシャルメディアはさらに拡大し、「コンテンツ制作・編成・流通」のすべての領域で、個人の力が増幅した。

 また、「スマートフォンの普及」による影響は、これまでの情報消費サイクルの時間軸を変えて加速させたほか、〝アプリ〟というこれまでの情報流通構造とは分離された新たな情報消費の起点を生み出し、コンテンツの消費形態も変えた。

 しかし、変化はこれにとどまらない。フェイスブックやアップルなど巨大なプラットフォーマーがニュースメディア領域への拡大を進めている。

プラットフォーマーによる垂直統合

 今年5月中旬に発表されたフェイスブックの「Instant Articles(インスタント・アーティクルズ)」は、ニュースメディアのコンテンツをサイト内に抱え、各ニュースメディアへ送客する従来の流通の役割から、コンテンツをサイト内に抱え、ユーザーの情報摂取の起点から消費そのものまでフェイスブック内で完結させる「ユーザー行動における垂直統合モデル」である。

 同様に、アップルも、世界開発者会議「WWDC2015」で、次期OSでニュースアプリを提供することを発表した。

 これによる本質的な変化は、コンテンツを流通させる主導権がユーザーに移行する中、今度は、フェイスブック内でコンテンツ消費が完了することで、編成権をフェイスブックが担うという点である。

 サービスを提供する側は、これらの変化にどう向き合えばよいのだろうか?

 一つは、フェイスブックをはじめとしたプラットフォーマーと併存しうる、圧倒的な体験価値の「起点」を持つことだ。

 もちろん体験価値は一つではなく、特定の領域などに特化したメディアや独占的なコンテンツを提供するメディア、他社が持ちえないコミュニティーやユーザー間のつながりによるコミュニケーション基盤を持つメディアも起点として強いだろう。

 もう一つは、ソーシャルメディアを起点とした情報流通に介在するため、自社のコンテンツをこの巨大なプラットフォームに広げ、ユーザーを獲得する「着地(点)」を取ることだ。

 その際にも、「ユーザーでもある個人の影響力」を生かす必要があるだろう。

 たとえば、「分散型メディア」と呼ばれるバズフィード(BuzzFeed)は、ユーザーによる編成と流通させる力を生かして、ユーザーが集まる各プラットフォームの仕組みに適応するように、「コンテンツ制作・編成・流通」全てのプロセスを、データやテクノロジーを活用しながら再構築して成長している。

 もちろん、起点を獲得できれば拡散もしやすく、着地(点)も取りやすいだろう。

急成長を続けるモバイル広告

 「スマートフォンの普及」と「ソーシャルメディアの成長」は、メディアビジネスの構造にも大きな影響を与えている。

 昨今、スマホ経由の利用者数が、パソコン(PC)経由のそれを上回っているなか、ネットメディアに参入している企業は、各社そろってスマホ領域でのマネタイズ(収益化)に苦心している状況といえるだろう。

 しかしその一方で、スマホ領域におけるビジネスの成長余地は、非常に大きいものがある。

 そのスマホ領域のビジネスで成長している企業の代表格が、フェイスブックである。今年4月に発表された2015年度第1四半期の決算資料によると、広告収入全体に占めるモバイル(スマホ)広告の割合は、1年前の59%から73%に拡大し、モバイル(スマホ)の売上高は80%以上成長している。

 主な売り上げは、タイムラインの中で消費されていくインフィード型の広告であるが、ユーザーにとって魅力的なコンテンツが集まるタイムラインと、膨大なデータを活用した高い精度の広告をセットで提供できるのがフェイスブックの強みとなっている。

もっとも信頼されるニュースサービスをめざす

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 このような大きな変化のなかで、ヤフー・ニュースは、何を大切にして取り組んでいるのか、現況を事例とともに紹介したい。

 ヤフー・ニュースは、1996年にスタートし、来年2016年にサービス開始から20年を迎える。
コンテンツパートナーは200社300媒体を超え、1日約4000本の記事の配信を受けている。

 昨年6月には、月間100億PV(ページビュー)を超えたが、その半分以上はスマホからの利用である。PCは18年かけて月間50億PVとなったが、スマホはわずか6年で50億PVとなり、3倍のスピードで成長し、今なお成長を続けている。

 ヤフー・ニュースは、テクノロジーが進化し、デバイスやユーザーの行動が変化しようと、「常にその時代の〝もっとも信頼されるニュースサービス〟」でありたいと考え、「社会や個人の課題解決のための行動につながる場」になることをめざしている。

 「行動につながる場」になるとは、ユーザーに良質なニュースを届けるまでが役割ではなく、関心を喚起し、ニュースの理解を深め、議論に参加する、あるいは他者と共有するまで、一連の体験プロセスを支援していくことだ。

 自分の行動が他の誰かに影響を与え、ひとごとではなく、より「自分ごと」として感じてもらう。この連鎖を広げ、よりよい社会づくりに貢献したいと願っている。

 次の節では、その「行動につながる場」の実現のためのヤフー・ニュースの取り組みを紹介する。

「人の手」による価値判断とテクノロジーの融合

 前述した方針を実現するうえで重要な役割を占めるのが、「ヤフー・ニューストピックス」である。

 トピックスを編成している編集部は、

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