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ラジオ業界は自己改革で商売替えの覚悟を

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

 地デジ(テレビ)移行後の跡地の一部(通称「V-Low帯」)に、地上波デジタルラジオが新設されることは、先月ドコモ陣営に決まった「携帯端末向けマルチメディア放送」(通称「V-High帯」)とともに、ほとんど世間には知られていない。

 デジタルラジオは、テレビと異なり、予定されている制度は「引っ越し」ではなく「増設」である。新しい端末での高音質・多チャンネル、簡易画像送信なども可能になる一方、現行のアナログ波は、災害時緊急放送(地震等での実績は十分)の目的などから、停波させない。それはラジオのチャンネル数が増えることを意味するが、ラジオを聴く人を圧倒的に増やさねば、毎日24時間番組をつくって送るための広告収入は成り立たない。

 しかし、ラジオ業界の営業収入規模はこの10年、2,500億円(1999年度)が1,500億円(2009年度)まで落ち込み、多くの放送局が現在赤字である。旧「CROSS FM」(2008年6月)、「Kiss‐FM KOBE」(2010年4月)、「RADIO-i」(2010年9月)などの相次ぐ破綻は、今後次々起こってもおかしくない状況にある。肝心のリスナーも、一定のボリュームや嗜好のディープさは保っているものの、総じて総数の減少及び高齢化の一途をたどっている。

 現状のビジネス形態ではラジオ業界全体がゆるやかに死を迎える、といわざるを得ない。これを突破する最大にして最後の機会がV-Lowだというのは安易過ぎる。ラジオ局の大半が年間売上10億円規模であり、自前のデジタル化投資に耐えられる状態ではない。

 V-Low導入をきっかけとする、ラジオ放送局自身の収益構造の抜本的自己改革、いわば「外科手術による商売替え」の、最後の機会としなければならない。

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