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「人間系」男女でいこう!

本田由紀

本田由紀 本田由紀(東大教授)

「草食系男子」とは、もともとは恋愛や性行為に積極的でない男性を意味していたと思うのだが、その後、意味が拡大して「マッチョな感じがしない男性」的な意味で用いられるようになっているように見受けられる。そこから派生して、「草食」ですらない「植物系男子」、あるいは「食虫植物男子」、「観葉植物男子」、「亜熱帯植物男子」、「多肉植物男子」等々、様々な言葉が生まれ始めているらしい。流行り言葉とはそんなものだとは思うし、これらの「○○系男子」という言葉群はユーモラスで、対象を謗るニュアンスが強くないので社会的な害は少ないだろうが、人間を分類・類型化して形容する言葉は時に現実への理解を歪めてしまうこともあるので注意する必要はある。

 それはさておき、「草食系男子」に話を戻すならば、仮にそれが「マッチョでない男性」つまり女性に対する身体的・社会的優越をふりかざしたり女性を自らの価値を高めるための装飾品とのみみなしたりすることのない男性を意味しているとしたとき、私はそのような男性類型が登場し、増加が語られていることを望ましいことだと思う。

 性別役割分業規範に基づく様々な男女間の不平等がことのほか強い日本社会において、それを掘り崩すような意識と行動が、むしろ男性の側から現れていることはとても興味深い。女性の側から尊厳や権利を主張するフェミニズムに関してはこの社会でも一定の歴史と蓄積があるが、男性側からの不平等解消の主張は希薄だったからだ。しかも「草食系男子」は主張ですらなく、存在であり現象である。机上の理念や肩肘張ったスローガンでなく、男性性にこだわらないふるまいや考え方を体現している若者が自然発生しているということは、より確実な社会変化を物語る。

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