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待たされ続けた末の行動――動かぬ政治への抗議としての提訴

大久保真紀

大久保真紀 朝日新聞編集委員(社会担当)

夫婦が同じ姓を名乗ることを定めた民法の規定は、個人の尊重を定めた憲法13条や男女平等を定めた憲法24条に違反するなどとして、事実婚の夫婦ら5人が国を相手取り、慰謝料を求める訴訟を2月中旬に東京地裁に起こすそうです。原告は、民法の規定を国会が改正しないことで精神的苦痛を受けたとして、1人100万円の慰謝料を求めるとのことです。

 原告となる人たちの気持ち、私はよく理解できます。

 いまかいまかと待っていた「選択的夫婦別姓制度」の導入がなかなか実現しない現状に対して、法的手段に訴えた行為だと思います。法務省の法制審議会が、選択的夫婦別姓の導入を答申したのは1996年です。それからすでに15年も経っています。

 自民党政権時代は「夫婦別姓は、家族の一体感がなくなる」など党内の反対論が多く、遅々として進みませんでした。民主党政権になってからは、昨年千葉景子元法相が、「選択的夫婦別姓制度」を盛り込んだ民法改正案を公表しましたが、閣議決定はされず、法案は国会に提出されないままでした。つまり、民主党政権も夫婦別姓についてはしぶったわけです。

 「選択的夫婦別姓制度」は、「選択的」という言葉が示すように、別姓を強制するものではありません。別姓にしたいカップルが、別姓を選ぶ制度です。どうして、この自由が認められないのか、私には不思議で仕方ありません。

 私は自分の姓を変えたくなくて、事実婚を選択しました。幼いころは「(連続女性殺人犯の)大久保清の娘」などとからかわれた経験があり、「大久保」という自分の姓はどちらかというとあまり好きではありませんでした。親には申し訳ないですが、姓に特別の愛情をもっていたわけではありません。子どものころは、好きな人の名字を自分の名前に重ねてひとり悦に入ってみたこともあります。

 しかし、この名前で学校に通い、社会に出て仕事をするようになると、なぜ自分の名前を名乗り続けることが当たり前ではないのか、と疑問に思うようになりました。現に学生時代は、「夫婦別姓でいく」「事実婚にする」と言っていた友人たちでも、その多くが、結婚するとすぐにパートナーの姓を名乗り始めました。

 しかし、

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