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自殺者3万人の時代を終わらせるには

伊藤智章

伊藤智章

13年連続で年間3万人が自殺した日本は、東日本大震災で、さらに深い心の傷を負った。1995年の阪神大震災が同年のオウム真理教事件と並び、バブル崩壊後の現代日本の沈滞を象徴したように、巨大災害が、悩む人たちの無力感、脱力感を募らせる。この事態をどう変えていくか。

 ただ、先日発表された警察庁の昨年の自殺統計そのものは、長いトンネルからの転換の兆しを感じさせるものだった。

 3万1千人台は9年ぶりだった。34都道県で前年比減少した。人口10万人当たりの自殺者が高かった東北6県が軒並み下がった。全国でもっとも減少率が大きかったのは、三重県の25%減、次いで青森県の17%減だ。一方、前年比で増えているのは、13府県。香川県の10%増、滋賀県の9%、石川県の8%の順だ。これらの県は、自殺率がむしろ平均より低い。東北ほどの関心事でないことが、対策の遅れを招いていないか、気になるところだ。これらの増加府県には、ぜひ施策の見直しをしてもらわなければいけないと思う。2006年の自殺対策基本法で、自殺は個人の問題ではなく、対策は国、自治体の責務、とされている。

 大都市部は横ばいだった。東京都は前年より36人少ない2953人、大阪府は31人多い2070人だった。ともに若年人口が多い分、やはり全国平均より自殺率は低い。とはいえ、世界レベルでは異常な数字だ。東京の自殺率は、米国の2倍なのだ。

 もちろん孤族とまでいわれるこの時代、とりわけ都市部での自殺対策は、スローガン倒れになりがちだ。

 でも都市部だからこそ出てくる発想もある。「自殺対策に取り組む僧侶の会」(東京)は、宗派を超えた44人の僧でつくる。代表は、藤澤克己さん(49)。近年の自殺対策強化に大きな貢献をしているNGO、ライフリンクの元事務局長だ。実家の寺を継ぎ、4年前に結成した。

 ただ、

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