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厳罰もどきのいびつな処分~大相撲八百長処分

松瀬学

松瀬学 ノンフィクションライター

もう出鱈目である。処分の軽重はともかく、「公平性」が著しく欠けている。力士の証言や心証だけで、八百長問題の物証はない。なのに、なぜ日本相撲協会はこれほど多くの力士のクビを切ることができるのか。

 「非常に重たい処分でした」と、放駒理事長(元大関魁傑)は記者会見で漏らした。たしかに東日本大震災の原発問題における菅直人首相や東京電力トップと比べると、その覚悟や誠実さでは立派である。

 だが、その処分の重さも相撲界の常識においてである。限界が垣間見える。日本相撲協会は、当初から関与を認めた竹縄親方(元幕内春日錦)や千代白鵬、恵那司を二年間の出場停止とするなど、二十三人の力士らを八百長に関与したと認定し、引退勧告などの処分を科した。ただ数の多さゆえ、一見、「厳罰」に映るが、規定で一番重い「解雇」や「除名」はゼロである。

 二年間の出場停止は、実質上、自ら依願退職しなさいと言っているようなものだ。これは角界を去る力士たちに対し、退職金が支払われることを意味する。一般社会でなら、これは「厳罰」とは言わない。

 監督責任を問われ、千代白鵬の師匠の九重親方(元横綱千代の富士)や北の湖親方(元横綱)、陸奥親方(元大関霧島)が理事を辞職した。これとて、ほとぼりが冷めれば、いずれ、元に戻るのだろう。かつて横綱朝青龍関の暴行問題の時、師匠だった高砂親方(元大関朝潮)はわずか1年で主任から委員に一階級復帰している。

 一番の問題は、特別調査委員会なる組織のいびつさである。まず権限も立場も不明瞭だった。手順もずさん。司法機関とは違い、強制力がないとはいえ、

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