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政府には、電波有効活用の結果責任がある

倉沢鉄也

倉沢鉄也 日鉄住金総研研究主幹

地上デジタルへの移行が「10年以内」と定められた改正電波法が2001年7月25日に成立し、それから10年がたった。そしてあまり広く認知されていないが、地上アナログ放送とともにアナログ衛星放送波(NHKのアナログBS-7、BS-11、WOWOWのBS-5)も24日に停波する。

 約半年の延長措置がとられた被災地3県を除き、24日24時と定められたアナログ停波(放送自体は正午に終了予定)を前に、NHKの調査では未対応世帯が29万世帯(6月末現在)だという。世帯普及率99%超は、当日の混乱を含めて事後補償の範囲ではあり、この記事が掲載されて数日のうちに、「地デジXデー」は過ぎていく。

 消費者からの反発などもいろいろあり、「宿泊施設」「カーテレビ」「2台目」「アンテナ工事需要」などの問題点もいまだ解決されていない。それらの論点は、ちょうど1年前に記した拙稿(2010年07月31日「延期は半年、政府は財政出動で完全普及を」)にあるとおりであり、その拙稿に記していない「アナアナ変換」「衛星放送受信」「エコポイント」「クーポン配布」などすでに政府が対応した論点も多岐にわたる。

 しかし、この時点で言えることは限られる。もう法律にそって政府の対策が事実上終わったことであり、その目的が(総務省による消費者向けの余計な説明ではなく)空き周波数創出による情報通信ビジネスの活性化という世界共通の国際通信政策であること、放送局のアナログ送信設備が経営の圧迫要因となっていること、そして未対応世帯が1%以下になっていることから、筆者が指摘したような事後補償について、上記「アンテナ工事需要」等の想定内事象の規模をはるかに超える状況がない(だから被災地対応で実際に延期された)限り、7月24日に停波せざるを得ない。これは周波数という世界共通の資産管理に対応する日本政府の国策であり、国民のためのサービスではない。

 国の事情で行う以上、本件についての国民の負担は本来すべて国家補償の対象である。本来であれば、「2台目」「カーテレビ」というマクロで見ればぜいたくではまったくない所有形態への対応、アンテナほかアナログ機器の処分費用、などすべてが対象とならなければならない。しかし現況としては、震災・節電対応で国家補償すべき生活水準が著しく下がっている中で、残念ながら上記「2台目」等の課題が対応される可能性は低い。アンテナ工事需要への対応の遅れによる南関東地域への措置すら、何も行われない可能性が高い。そもそも震災対応の予算逼迫の中で、これ以上の広報宣伝費すら見直しの対象である。

 本稿は24日を前に書いているが、24日当日も、静かにニュースのひとつとして取り上げられる程度のことだろう。それは現時点では致し方ない。その上で、国際政策のひとつとしての意義を考え直す議論をあらためて喚起することのほうが重要に思える。なぜなら、地デジ完全移行によって空いたVHF帯を経済政策として有効活用する方向性がまったく見出されていないからだ。この数年議論されてきた活用方策は、自動車同士の出会い頭に対する注意喚起(自動運転するわけではなく危険だと告知するだけ)や、携帯端末向け放送サービスで市場競争を喚起するとしているが、筋が悪すぎる。前者の課題については ・・・続きを読む
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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄住金総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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