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公共工事の利権解明した検察の全面勝利

市田隆

市田隆 朝日新聞編集委員(調査報道担当)

小沢一郎・民主党元代表の資金管理団体「陸山会」をめぐる一連の事件の摘発は、「政治介入」「国策捜査」など厳しい批判にさらされてきた。だが、26日の東京地裁の判決は、政治家側と企業の癒着という、古くて新しい問題の解明を目指した特捜捜査に、全面的に信を置く判断となった。

 元秘書3人が政治資金規正法違反(虚偽記載)罪に問われた一連の事件は、第1ステージの西松建設による違法献金事件、第2ステージの土地取引事件に分かれる。地裁の判決では、第1ステージで、陸山会の会計責任者だった大久保隆規被告(50)が有罪、第2ステージで、大久保元秘書、事務担当秘書だった衆院議員・石川知裕被告(38)、後任の事務担当・池田光智被告(34)がそれぞれ有罪。大久保元秘書は一部無罪だが、虚偽記載の一部に関与していなかったという程度にとどまった。さらに、第2ステージの裁判で焦点となっていた、中堅ゼネコン「水谷建設」から石川議員らへの計1億円の裏金提供という検察側の主張についても、石川議員らの徹底否認にもかかわらず、地裁はすべて認めた。

 今回の判決を分析すると、裁判官の信頼を確保した検察側の立証の最大のポイントは、第1ステージの事件で明らかになった、東北地方の公共工事受注における小沢事務所とゼネコン業界の癒着構造だ。

 第1ステージに対する判決では、公共工事の受注業者決定に強い影響力を持っていた小沢事務所と、受注獲得のために違法献金を行った西松建設という関係を明確に認定した。本命業者を指名する役割を前任秘書から引き継いでいた大久保元秘書も、特定業者の受注をゼネコン談合の仕切り役に口利きしていたことを、法廷で認めている。

 第1ステージの強制捜査が行われた2009年3月は、政権交代につながりうる総選挙がいつになるか注目されていた時期。民主党の実力者側への捜査に対し、「政治介入」との批判が巻き起こった。だが、水面下の癒着構造と、公共工事に絡む違法献金の「わいろ性」を重大視した今回の判決をもって、捜査の成果は改めて評価されるべきだろう。

 第2ステージの土地取引事件で、3元秘書の虚偽記載を有罪とした地裁の判断は、この小沢事務所とゼネコンの癒着構造を踏まえたものだ。水谷建設からの裏金については、同社元社長による裏金を渡した場面の詳細な証言はあったが、石川議員らが徹底否認する中で真相不明の部分は残っていた。その中で、第一ステージで立証された癒着構造という背景事情を重く見て、大型ダム工事の下請け受注を図った水谷建設から石川議員と大久保元秘書が計1億円の裏金を受け取った▽その時期に行われた土地取引の原資4億円を隠そうとしたーーとの認定に至ったとみられる。

 ここまでの検察側の全面勝利は、誰も予想していなかったと言っていい。地裁が今年6月、石川議員らの捜査段階の調書の多くを証拠として採用しない決定をしたうえ、取り調べの行き過ぎを厳しく非難したことから、検察側に厳しい目が向けられた。大阪地検特捜部を舞台にした証拠改ざん事件の発覚以来、特捜捜査の威信は地に落ちていたが、この調書不採用で、「東京地検よ、お前もか」というムードが濃厚になっていた。

 今回の判決には現れないが、

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