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名指し批判2回だけ、「防波堤」の落合談話

辰濃哲郎

辰濃哲郎

ここ1年間に、朝日新聞に載った中日の落合監督の試合後のインタビューに、すべてに目を通してみた。面白いことがわかる。

 多くの監督はゲームを振り返って、選手の評価を口にすることが少なくないが、落合監督は選手への批判がほとんどないことに気づく。現役時代、歯に衣着せぬ発言が目立ったことからして、意外だった。

 今季の中日は開幕当初、打線も2割そこそこで最下位に低迷する。だが落合監督は選手批判を封印し、「自分たちが置かれた状況をゆっくり考えてくれればいい」とあわてない。抑えの切り札である岩瀬の乱調にも「700試合分を1人で楽しんでいたのだろう。テレビに長時間映りたかったんだ」(5月17日)と記者の質問をいなす。高校・大学時代に体育会の野球部で投手だった私には、プロとの違いはあるにせよ、こういった監督の言動に、どれだけ選手が救われるかがよくわかる。

 選手にとって最も痛いのは、自分の失策がらみの敗戦だ。だが、落合監督は「経験しなきゃいけないメンバーがいる。失敗して、成功して、それでいいんじゃないか」(7月13日)、「いいじゃないの。青いリンゴが熟すまで経験を積んでくれれば」(7月19日)、「あれが野球だよ。何のミスもなく終わるなんてない」(9月14日)などと選手の肩を持つ。

 監督として通算600勝目を迎えた試合でも「関係ないんじゃない? 選手に聞きなよ。本塁打2本打ったやつがいるんだから」と主役である選手に目を向けさせる。

 シーズン中、明らかに名指しで批判したのは、2回だけだ。5月3日、ヤクルトに苦杯を喫した試合で「3番、6番の差だな」とふがいない打線に苦言を呈した。6月5日には、3番の森野について「森野だよ、森野。森野!」と珍しく名を挙げた。だが、翌日の試合で7番に降格させられた森野が2安打を放つと「森野、森野です。7番で打てるんだから、3番でも打てるだろう」と激励する。

 不振を極めた和田についても ・・・続きを読む
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筆者

辰濃哲郎

辰濃哲郎(たつの・てつろう) ノンフィクション作家

ノンフィクション作家。1957年生まれ。慶応大卒業後、朝日新聞社会部記者として事件や医療問題を手掛けた。2004年に退社。日本医師会の内幕を描いた『歪んだ権威』や、東日本大震災の被災地で計2か月取材した『「脇役」たちがつないだ震災医療』を出版。

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