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NOTTVに捧げる、せめてもの未来図

倉沢鉄也 日鉄総研研究主幹

挑発的なサービス名(「テレビじゃない」)とコマーシャル、「日本初のスマホ向け放送局」というキャッチフレーズとともに、4月1日からNOTTVというメディアサービスがスタートした。ようするにスマホやタブレットPCを含むケータイ端末で見ることのできる、BeeTVのような通信による動画配信ではない、地上波放送電波によるテレビ映像等のサービスである。

 

 サービスの詳細は当該ホームページなどに譲るが、サービスはまだはじまって1カ月であり、対応端末や放送エリアやチャンネル数(番組数)などは、今後拡大していくことになるので、現時点でそれらが中途半端であったり、会員数が極少数であったり、見たくても見られないという状況自体を論じる意義は薄い。AKB48も韓流も、見る人が見ればそれなりに面白いだろう。問題の本質は、そんなところにはない。

 

 このサービスの本質と、将来のすべてについて、筆者はすでに論じきってしまっている。WEBRONZAで「マルチメディア放送、お客さまの声を聞け(2010年10月7日)」と論じ、そのバックボーンとして、2007年12月に総務省主催「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」において市場性の克服アイデアをやんわりと論じつつ、この新規事業の将来を、結果責任をとるべきすべての関係者の前で説明した。NOTTV自身が「モバキャス」と呼ぶ、いわゆるVHS-High帯域の放送サービスに、既存放送事業者(テレビ、ラジオ)以外が参入するのなら「他ビジネスのひっかけリーチ(麻雀用語)」で取り組むしかないと整理し、「端末販売や通信サービスをビジネスとして、プロモーションする意志と資金力があれば、参入の意義あり」とした。

 

 そして誕生したのがNOTTVである。ドコモがauと争って獲得したビジネスであるが、auが頼った米国の同種サービスMediaFlo(2007~2011)はこの世を去った。静止衛星と地上波再送信のハイブリッドで同種サービスを日本で実施したモバHO!(2005~2009)は、短い生涯をすでに閉じた。キラーコンテンツの話もそのたびに出た。AKB48について深くは論じないが、AKB48の持つ多様なコンテンツには、もっと適切な媒体(場)がある。

 

 残念ながらこのNOTTVを運営する会社はNTTドコモ自身でなく、またケータイキャリア相乗りでもなく、

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