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地震の震度予測と被害想定の困難さ

岩田智博(AERA記者)

 首都直下地震の被害想定が大幅に見直された。

 文部科学省の「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」が3月30日に東京都内の最大予測震度を「震度7」に引き上げた結果を踏まえ、都は建物の倒壊や火災などによる死者が約9700人、負傷者が約14万7600人、帰宅困難者が約517万人にのぼると発表した。

 確かに、首都機能が一極集中している日本で、首都直下地震が起これば甚大な被害は免れない。早期に対策を打ち、警戒を怠らないことは必須だ。

阪神大震災で倒壊したビル=1995年1月17日、神戸市

 ただ、この発表通りの「揺れ」や「被害」が出ると捉えることは早計に失する。

 最も大きな被害が出る都の想定は、マグニチュード(M)7・3の東京湾北部地震が発生した場合だ。

 だが、このM7・3の東京湾北部地震という想定自体、実態に即していない可能性が高い。

 東京都が結果を反映させた文科省の特別プロジェクトの発表では、「『東京湾北部地震』は過去に起こったことが確認されていない地震」としている。

 その上、M7・3についても特別プロジェクト委員の纐纈(こう・けつ)一起・東大地震研究所教授は「M7・3という想定は仮定で防災政策的見地からの判断。科学的根拠があるわけではない」と明言。

 この想定は、起きれば甚大な被害が出る地震を仮定し、防災政策上のマグニチュードをあてはめたものなのだ。「仮定に仮定を重ねた」ものだと言ってもいい。

 今回の都の発表では23区で震度7は湾岸地域の一部にあらわれ、震度6強の地点は06年想定の5割から7割に広がった。

 とはいえ、首都直下地震が起こったとしても、都の想定通りの「被害」が出るとは限らない。「揺れ」も異なる可能性がある。

 たとえば

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