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 米国メジャーリーグ(MLB)シアトル・マリナーズのイチロー選手がついに「普通」の野球選手になってしまったかのようだ。年齢的な衰えが出ているのかも知れない。来年や再来年を見すえた戦略を組み立て、今から準備にとりかかる必要があるだろう。

 MLBの開幕から2カ月半がたった。6月14日(日本時間)現在、イチローの打率は.264、彼の実績及び1700万ドルの年俸からすると、まったくもの足りない。もちろん、今シーズンの試合はまだ100試合近く残っているので、今後打率と安打数がどれほど上がり、どの程度の成績でシーズンを終了するのかは分からない。

 だが、マリナーズとの契約は今季で終了し、彼の野球人生も終盤に差しかかっているのだから、これまでとは違う目標を設定して欲しい。彼には、シーズン200本の安打ではなく、1941年以来誕生していない4割打者を期待したい。彼ならその気になれば出来る。そして、今シーズンから準備に入ることを勧める。

 下記のような、偉大な打者の記録を参考にすると、イチローが取り組むべき打撃哲学を描くことができそうだ。

選手(年)安打/四死球/三振/打率/出塁率

テッド・ウイリアムズ(1941)185/145/27/.406/.551

ジョー・ディマジオ(1941)193/76/13/.357/.440

ピート・ローズ(1973)230/65/42/.338/.401

バリー・ボンズ゙(2001)156/186/93/.328/.515

イチロー(2004)262/53/63/.372/.414

イチロー(2011)184/39/69/.272/.310

<*ウイリアムズは1941年に打率4割、ディマジオは56試合連続安打を達成。ボンズは2001年に73本のシーズン最多本塁打、イチローは2004年にシーズン最多安打を記録した>

 イチローの成績を分析すると、幾つかの特徴を見出すことができる。

(1)安打製造機の割には四死球が少ない。チームプレーよりも個人プレーに走ることが多かったと言われるピート・ローズよりもイチローの四球が少ない。チームの勝ち負けにかかわらず安打数を増やそうとするイチローをマリナーズの一部の選手が非難する時期があった。これまでのデータを見る限り、彼らの非難が全くの的外れでもないことが読み取れる。

 これはテッド・ウイリアムズが打率.406を達成したりジョー・ディマジオが56試合連続安打を放った時、また、バリー・ボンズが年間73本の本塁打新記録を達成した2001年の四球とを比べると、なお分かりやすい。

拡大イチローは出塁率を上げられるか?

(2)四死球が少ないことと関係するが、イチローは本塁打を打つタイプではなく、巧打者と称賛される割に三振が多い。ウィリアムズやディマジオの三振数と比較すると歴然としている(メジャー通算で平均68)。

 イチローが相手投手との対決を楽しんでいるのはテレビを通してよく分かるが、制球の良い一流の投手はイチローが悪球にも手を出すことを熟知しているので、まともな球は投げてこない。四球が少なくて三振が多いので、安打数が増えずに打率も下がるのは当然だ。

(3)高い打率の割に出塁率が低い。これも四球が少ないことと関係する。塁を埋め、得点の機会を作ることでは安打も四球も同じことだ。メジャー通算の出塁率は.370で、出塁率に関する限り、けっして高い選手ではないのだ。出塁率が低いと、チームの得点に結びつく機会が増えない。イチローが200本以上の安打を打っても、マリナーズがプレーオフの常連になれない原因の一つが、イチローの出塁率の低さにあるのは明白だ。

 今年でマリナーズとの契約が終了するイチローは、メジャーリーガーとして残された期間はさほど長くない。従って、リーグ優勝を狙える球団に移籍すべきだ。その方が彼にとってプラスになる。なぜなら、そういうチームに移るとチームの勝利を優先し、出塁を優先しなければならないからだ。

 その結果、 ・・・続きを読む
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筆者

大坪正則

大坪正則(おおつぼ・まさのり) 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

1947年生まれ。1970年、伊藤忠商事に入社。1981~85年まで、アメリカのニューヨークとデンバーに駐在。情報通信総合企画室などを経て 1986年、NBAプロジェクトマネジャーに。現在、帝京大学経済学部経営学科教授。専門はスポーツ経営学。著書に『パ・リーグがプロ野球を変える』『スポーツと国力』(以上、朝日新書)、『プロ野球は崩壊する!』(朝日新聞社)、『メジャー野球の経営学』(集英社新書)など。2014年3月4日、死去。

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