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生徒の実名流出 フジだけの問題ではない

水島宏明

水島宏明 ジャーナリスト、上智大学文学部新聞学科教授

 滋賀県大津市で中学2年生の男子がいじめを苦に自殺したとみられる事件の報道で、フジテレビのアナウンサーが2つの番組の生放送で相次いで謝罪した。

 「ここでおわびです。関東などの一部地域で昨日までの午後5時台などでこの問題を取り上げた際、人権上の配慮に欠けた映像を使用しました。関係者のみなさんにおわびします」(7月7日土曜日・夕方『スーパーニュース』)

 「ここでおわびです。6日金曜日の放送で・・・。放送では人権にかかわる部分は黒く塗りつぶして放送しておりましたが、大型のテレビで静止画で見ると、実名の一部が透けて見えることが分かりました。今後はよりいっそう細心の注意を払っていきます。申し訳ありませんでした」(7月9日月曜日・午前『とくダネ!』)

 前者はニュース番組、後者は情報番組で、どちらもフジテレビの看板番組だ。昨年10月、市立中学2年生の男子生徒が自殺した事件で、事件後に学校が実施した全校生徒のアンケート結果などが最近になって報道されている。自殺した男子生徒が数人の生徒から、殴られていた、蜂の死骸を食べさせられていた、粘着テープで口をふさがれていた、カネを脅し取られていたなど、陰惨ないじめの実態が明らかになっている。「自殺の練習」や「葬式ごっこ」の実態、日常的に「死ね」と言われていたらしいことも分かってきた。

 真相究明のカギを握るのが全校生徒を対象にしたアンケート結果だ。男子生徒の親が大津市といじめの加害者と思われる生徒の親らを相手取って損害賠償を求める裁判を起こしている。フジテレビは、その弁護団が全校生徒アンケートを元にまとめた文書資料に関して、「人権上の配慮に欠けた映像」を流したのだ。

 7月5日木曜日の『スーパーニュース』はこの文書の映像を使って放送した。個人名が入った部分は黒く塗りつぶされ、電子的なボカシが入るなどの加工がされていた。しかし、一部だが黒塗りやボカシが全くない文書も映し出され、生徒の回答部分で「トイレに●●がつれていかれた」「●●が●●と●●になぐられた」「●●と●●にぼこぼこ」など実名がそのまま放映されていた(●●の部分が実名)。

 7月6日金曜日の『とくダネ!』も同じ文書を違う形で撮影した映像を登場させた。実名が出てくる部分を黒く塗りつぶしていたが、

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