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デジタル放送の利点を生かしていない五輪中継

大坪正則 大坪正則(帝京大学経済学部経営学科教授)

 オリンピックのテレビ中継はデジタルの利点を十分に生かし切っていない。テレビ受像機の画面が横にワイドになったにもかかわらず、カメラワークがアナログの時と変わっていないようだ。カメラマンとディレクターの習性が直らないのだろうか。

 デジタルの利点は映像が横に広がった上に美しくなったことだ。しかも、受像機が大きくなった。だから、たとえばサッカーの場合、カメラを従来よりも後方に置いてグラウンド全体を俯瞰的に映すことによって、視聴者はスタジアムの観客と同じ目線で試合を楽しむことが可能になった。

 一方、カメラがアナログの時よりも後ろに位置するので個々の選手が小さく映り、選手同士の接触やファウルがよく分からなくなったことは否めない。だが、カメラが20台前後据えられ、あらゆる角度から試合を撮り、リプレーやスローモーションの技術も利用して、たとえば、なぜ今のプレーが「イエローカード」なのかが説明されやすくなった。だから選手が小さく映っても全く問題はない。むしろ、観客よりも視聴者のほうがより快適に試合を楽しめるようになったといえるだろう。

 日本のプロ野球やJリーグの試合をテレビで見ていると、カメラを従来よりも若干引いているなと感じるが依然として物足りない。今年の3月にロンドンに滞在した時、プレミアリーグの試合をテレビで見たが、カメラワークはイギリスも日本と同じだった。

 ところが、昨年2月、イタリアでサッカー中継を見た時は新鮮だった。インテルが画面左に攻撃をする時、

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