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元経産官僚古賀茂明氏インタビュー――主要政党の原発政策と第三極が固まるまでの背景

前田史郎 朝日新聞論説委員

 改革を進める政治家なら誰にでも知恵を貸す――。昨年秋に経済産業省を退任した古賀茂明さんはそういってこの1年間、各地の政治家や首長と接触を続けてきた。脱原発で政策論争をしかけ、時には新党発足について知恵を授けたこともある。論戦が続く衆院選で、原発の将来を本気で考えているのはどこか。公約の表と裏を読み解いてもらうとともに、関係が深い日本維新の会と日本未来の党の結党にまつわる裏話などを聞いた。(聞き手=前田史郎・朝日新聞論説委員)

 ――今回の衆院選挙では各党ともエネルギー政策の主張に力を入れています。有権者の関心も高い。しかしそれぞれの政策の違いはなかなかよみとれません。古賀さんの分析、見たてをお願いします。

 公約をみれば、日本未来の党が10年以内に全原発の廃炉をめざし、みんなの党が2020年代に原発ゼロ、公明が「可能な限り速やかに」ゼロをめざすという立場だ。民主は30年代ゼロと明記した「革新的エネルギー・環境戦略」を閣議決定しなかったのに、選挙では原発ゼロをことさら強調しているように見える。とりあえず自民のいうことを批判していけという戦略のようだ。その自民党はさすがに原発を「推進する」という本音はいいにくい。「3年以内の結論をめざす」という公約の文章は、選挙戦で不利にならないようにという戦術的な方便だろう。

 日本維新の会はゼロをめざす人と、存続派の旧太陽系が共存している。代表代行の橋下徹大阪市長は経済的な損得勘定から最終的にゼロをめざした方がいいと考え、石原慎太郎代表は安全保障の観点から原発存続派だ。

 ただゼロを主張している各党ともに具体的な方策まで示しえていない。

 ――維新は政策実例集で「2030年代フェードアウト」とかいています。石原さんはこの表現を「見直す」といっていますが、30年代と明記した意味はあるのでは。

 そもそも、30年代フェードアウトは公約ではないと、橋下さん自身が明言しています。維新の「骨太2013―2016」は、公約本文と政策実例に別れていて、政策実例の方は公約ではないということにしてあります。最初から逃げ道を作っているのです。さらに、実例集をよく読んでください。「結果として、既設の原子炉による原発は2030年代までにフェードアウトすることになる」とある。「既設の原子炉による」というまくら言葉がくせものです。すでにある原子炉は廃炉にする。ただし同じ場所で新型炉に置き換える「リプレース」は容認する。そんな道を残しているようにも受けとれる。役人がよく使うレトリックで、まさに霞が関文学です。

 ――「原発ゼロ」ではないことに意味があるわけですね。よくこんなまくら言葉を入れることを思いついた、と逆に感心しますが。

 旧太陽の片山虎之助さんは自民党政権の渡辺喜美行革担当相の時、公務員制度改革の審議で霞が関サイドに立ってものを言った急先鋒だと私は思っている。園田博之さんも含めものごとをまとめる手練手管にたけた海千山千の人たち。官僚主導政治の象徴だ。脱官僚をかかげる維新とはもともと水と油なんです。

 言葉に敏感な橋下さんは、このまくら言葉にこめられた意味に当然気づいただろう。しかし合流を優先して、あえてむし返さずに折り合ったのではないか。

 ――日本未来の党も、公約とは別紙で「卒原発カリキュラム」を出している。ゼロへの工程を具体的に示そうという姿勢がみえます。

 方向性ははっきりしている。ただしこちらの公約も「遅くとも10年以内の完全廃炉・完全卒業の道筋を創ります」とある。末尾の「道筋を創ります」はなんのためか。10年以内に完全廃炉、とストレートな表現にした方がわかりやすいのにそうしていない。

 大事なのは、原発を「許されざるエネルギー」と考えるのかどうか。哲学として。この一点に立つかどうかで主張をぶつけ合ってこそ、意味のある論戦になっただろうが、選挙戦ではそこまで深まっていない。

 ――未来の党の原発政策は古賀さんといっしょに脱原発策を練っていた大阪府市エネルギー戦略会議の飯田哲也・党代表代行が立案した。

 そうですが、未来も維新と同じジレンマを抱えている。大物政治家の力を借りれば、そのかわりに政策が純粋ではなくなる。ジレンマのなかでいかに初心を貫けるか。選挙が終わると、抑えていた利害が表面化してバトルになる可能性もある。

 ――飯田さんが未来から出馬したことはどう思われますか。

 飯田さんの行動は理解

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