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[1]高橋大輔、羽生結弦、無良崇人、それぞれの決意

青嶋ひろの フリーライター

 やっぱり世界選手権は違う! と、毎年のように思う。グランプリファイナル、全日本選手権、四大陸選手権、そして世界ジュニア選手権と、選手たちが一大目標に定めた試合が、いくつも続いた。でもどんな試合と比べても、世界選手権はまったく違うのだ。

 街に着いた途端、目に飛び込んでくる歓迎の垂れ幕やポスター。お揃いのユニフォームで出迎えてくれる、たくさんのスタッフやボランティア。お気に入りの選手たちの噂話や戦況予想を、そこかしこで繰り広げている世界中から集まったファン。そして、最高潮の緊張感をまとって練習リンクに降り立つ選手たち。

 今シーズンの真の王者や女王を決める戦い。しかも今年は、4年間で一番盛り上がる、プレ五輪シーズンの世界選手権だ。参加選手層も4年間で最も充実しており、若手から来年引退を決めているベテランまで入り乱れ、ソチ五輪を彩る主たるメンバーが勢ぞろいしている。

 今年の舞台は、カナダ・オンタリオ州の小都市、ロンドン。

 現地時間3月12日まではメインリンク(バドワイザーガーデンズ)とサブリンクにて、全種目の選手たちが公式練習を滑走する。4年間でオリンピックの次に重要な一戦は、静かに、しかし世界選手権らしい華やぎの中でスタートした。

カナダのトロント空港に到着した高橋大輔=2013年3月11日

 男子シングルの日本勢は、12日昼すぎ、メインリンクに3選手そろって登場。公式練習だけを見るためのチケット(あるいは全日程通しチケット)を買い、開幕前の選手たちを検分しにやってきた大勢の観客を前に、それぞれの色のスタイルで直前の調整を進めた。

 実に4年ぶりの世界選手権。奇しくも前回出場した2009年も、オリンピック前年の世界選手権だった無良崇人は、四大陸選手権からさらに身体を絞っただろうか。「これを試合で見たい!」とグッと手を握り締めてしまう大きな4回転-3回転も、かるがる跳んで見せてくれる。プログラム(SP)を滑りはじめても、ひとつひとつの動作が力強く、日本人離れした骨太な演技スタイルに磨きをかけてきたようだ。

 ジャンプの軸がぶれて失敗するシーンも何度かあったが、彼は気合いが入り過ぎると軸がぶれやすいとのこと。漲(みなぎ)る気合いで、高校3年生のころとは違う、自ら掴みとった日本代表の貫録を見せてくれそうだ。

 「4回転の調子も、崩れないでしっかり跳べています。だいぶ前に出させてもらった時は、社会科見学じゃないけれど、世界選手権という場を体験するような立場でした。でも今回は、順位を狙っていくつもりでいく。そこが、前回との一番の違いかな」(無良)

 世界選手権出場8回目、3選手の中で跳び抜けて経験値の高い高橋大輔。彼がプログラムを滑り始めると、カナダの観客たちのワアアッという歓声もひときわ高くなったのだから、さすがだ。

 しかし4回転は崩れ落ちるように転倒するなど、ジャンプの調子は決して良くない。プログラムも最初は流し気味で、リズムをとりつつ顔の動きだけをつけて滑ったりもしている。そんな様子を見ていても……いや、この人は、どんな練習をしていても大丈夫、という気になるのが高橋大輔だ。

 大きな試合への合わせ方は誰よりも知っているし、世界選手権の怖さだけでなく、楽しみ方も知っている。それにいったん気持ちを入れて動きだせば、見せるのはそこにいる誰よりもきれいなシルエット。いつまでも目で追っていたいスケートをするのは、やはりこの人だ。

 フリー「道化師」も、大事に彼なりに育ててきたものを、今季の集大成として見せるつもりだろう。これまでよりもさらに音楽と一体となった滑り、彼の動きにこちらの心も沿わせていくと、最後のフィニッシュでピタリと彼が止まった瞬間、ぞわりと鳥肌が立った。調子は最高と言えなくとも、最低限納得するパフォーマンスを見せる準備にぬかりはない、そんな高橋大輔だ。

 「ジャンプの調子は、良くないですね。シーズン最後まで、良くない(笑)。でも、4回転の2度入ったプログラムをこなすために、滑り込みに重点を置いてきました。体力の心配はもうなくなるくらい、いい練習をしてきたと言えます。でも、今のジャンプの調子を考えると難しいけれど……もちろんパーフェクトな演技をしたい。次の課題に向かうためにも、世界選手権は必要なステップ。やり残したことがないように、思いっきりやりたい。結果は、思い切りやったあとで受け止めますよ(笑)」(高橋)

 そして全日本チャンピオン・羽生結弦は、他のふたりに比べるとちょっと

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