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「みとり難民」を出さないために

大矢雅弘 ライター

 人生の最期をどこで迎えるかをめぐる関心が高まっている。老人ホームの常勤医が著した「大往生したけりゃ医療とかかわるな」という刺激的な題名の本が話題を呼んだことは記憶に新しい。昨年の年間ベストセラーの6位に入った。なるべく苦しまずに平穏な死を迎えたいという切望の高まりの表れでもあるのだろう。超高齢社会に突入しているわが国は、同時に多死社会に向かっている。
 厚生労働省の統計によると、2011年の死者数は126万人余だが、死亡者数はこの先、右肩上がりに増加し、2030年ごろには161万人が亡くなると推定されている。2030年の時点でのみとりの場所について、数年前に厚生労働省の幹部が試算をした。病院で死ぬのは約89万人。特別養護老人ホームなど介護保険施設は今の2倍を整備して約9万人をみとる。住み慣れた自宅で最期を迎えるのは1・5倍増の約20万人。
 そんな数字を積み上げると、死を迎える場所の見通しが立たない人が約47万人にのぼる。現実には老老世帯や高齢者単独世帯が増えると、自宅での死亡が難しいため、この推計以上になるとの見方を示した。大量の「みとり難民」が発生することが現実味を帯びてきているのだ。
 いまの高齢者の死に場所は自宅が1割に対し、病院が8割強だ。財政難で厚労省は病床数を増やさない方針をとっており、今後は病院で8割をみとることはかなわず、在宅ケアに頼るしかない。人々が「みとり難民」にならず、自分らしい最期を迎えられるように、新しい在宅ケアの実践を全国に広める活動は、いっそう大切になっている。
 宮崎市では、在宅介護が困難だったり、施設が受け入れてくれなかったりして行き場所に困った高齢者をNPO法人ホームホスピス宮崎が運営する「かあさんの家」が受け入れている。2004年6月に第1号ができ、市内で4カ所を運営する。これまで40人以上をみとった。がんと認知症をあわせてもつ人が4割近くを占め、最も多い。がん治療を受けている間に認知症が進み、家族も病院もみられない、という例が多いという。1軒で5~6人を引き受け、6人のヘルパーが日中は2人、夜間は1人の24時間態勢でわが家的な雰囲気づくりをしつつ世話をし、最期の時まで支えている。
 「かあさんの家」は介護保険などに基づく「施設」ではない。自宅で暮らすのと同じように、

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