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原発新基準、腹を探り合う規制委と電力会社

前田史郎 朝日新聞論説委員

 全国の原発に適用される新しい規制基準が決まり、電力各社は再稼働へ向けて準備をはじめた。一方、10カ月という突貫作業で新基準をつくった原子力規制委員会は、時間と人手が限られるなか、時には柔軟な姿勢も見せる。全国で唯一稼働している大飯原発への対応から、原子力規制の新たな姿が見えてくる。

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 新基準が決まった6月19日、原子力規制委。田中俊一委員長の声は再稼働に反対する人たちの怒声でかき消された。
 「福島が収束していないのに早すぎる」「再稼働ありきの姿勢は許さないぞ」
 田中委員長はそれを無視し、自分を納得させるような口調で発言を続けた。
 「国際的に見てもきちっとした体系ができた。ただし真価は、これからの審査で魂を与えられるかどうかにかかっている」
 規制委がどれほどの厳しさで審査にあたるのか。4日前の規制委の動きが、ひとつの試金石となった。
 6月15日、唯一稼働している関西電力大飯原発3、4号機(福井県)を、更田豊志委員が視察した。
 新規制基準への適合性を確かめる事前審査の一環。春以後、過酷事故の対策などを検証してきたが、実際の現場で確かめた。
 焦点になったのが、事故が起きた時の指揮拠点として新基準が設置を求める「緊急時対策所」(免震重要棟)だ。同原発にできるのは2015年。当面は会議室で代用する方針だ。
 更田委員は会議の妨げとなる騒音や、モニターの場所を確認。視察後、「まだ整っていない部分はある」としながらも、「決定的にこれが足りないという印象はなかった」と語った。
 結局、規制委は定期検査に入る9月まで稼働し続けることを認める方針だ。
 筋から言えば、大飯はいったん止め、他の原発と同じように新基準で審査し直すのが妥当だ。当初はそのつもりだった規制委が、例外的な容認へ転換した。
 大飯3、4号機は合計出力236万キロワットで関電管内の電力需要の約10%を占める。運転継続なら関西の夏場の電力需給が助かる。
 仮免許の状態で「OK」を出すのは、妥協点を探って落としどころを見つけていく、規制委の現実路線と受けとめるむきもある。
 大飯の場合、敷地内の破砕帯が活断層かどうかの結論も出ていない。緊急時対策所が完成していない状況で、本当に福島のような事故に対応できるのか。
 委員長は「いずれきちっとしたものを作ってもらわないといけないが、 ・・・続きを読む
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筆者

前田史郎

前田史郎(まえだ・しろう) 朝日新聞論説委員

1961年生まれ。神戸、広島支局、東京・大阪社会部で事件や行政、核問題、厚生省クラブなどを担当。社会部デスク、教育エディター、大阪・社会部長、同編集局長補佐、論説委員、編集委員、論説副主幹(大阪駐在)を経て18年4月から現職。気象予報士。著書に『核兵器廃絶への道』(共著)。

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