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FM活用で一時しのぎに走ったAMラジオ

川本裕司 朝日新聞社会部員

 15年前に構想が示されてから難航してきたデジタルラジオが縮小した形でようやく実現する見通しとなった。総務省の「放送ネットワークの強靱化に関する検討会」が6月に示した中間取りまとめ案では、経営が厳しいAMラジオのFM活用が主軸となっている。取りまとめ案ではラジオのデジタル化も認め、新規参入するのはエフエム東京系など2社となっていたが、その後、全国展開の条件が制約となりエフエム東京系だけになったという。デジタル化に比べ費用のかからないFM波利用という一時しのぎともいえる選択の意向が多いAMラジオ局の未来が明るい、とは依然として言い切れない。
 大学教授や自治体首長、放送局役員らでつくる放送ネットワークの強靱化に関する検討会が始まったのは今年2月。2年前の東日本大震災で発生から数日間の情報収集で最も役立ったメディアはラジオだった(日大などの調査)が、都市部での難聴のほか、送信所の老朽化や売上高が減少傾向が続くという厳しい経営環境に直面している。東日本大震災では、津波で周辺が水浸しになった仙台市にある東北放送のラジオ送信所が自家発電用の重油が切れ、震災翌日から3日間停波に追い込まれたこともあり、災害時の機能強化も取り組まなければいけない課題となっていた。
 郵政省(現・総務省)の研究会がラジオの今後について、AMとFMを存続させるとともに、「モアチャンネル」としてデジタル放送の参入を認める方針を打ち出したのが1998年。自動車など移動体向け放送を念頭に、音質の良さや動画を送れることの利点を生かしたデジタルラジオが検討されてきた。2011年の地上波テレビのデジタル化で、テレビ(VHF)の1~3チャンネルがUHFに移った跡地の周波数帯の「V―Low」(90~108メガヘルツ)を使うことを前提に実験放送もしたが、普及の見通しが立たないことから、端末のデジタルラジオ受信機をつくるメーカーは表れず、総額で1200億円と見込まれるデジタル化事業が袋小路に追い込まれていた。
 昨年秋には、吉崎正弘・総務省情報流通行政局長が「周波数の空き地をつくるのに公費を使った。空き地を埋めるために国の金は入りません」と日本民間放送連盟(民放連)の会合で表明、民放ラジオ局がデジタル化には自力で遂行することに迫られた。NHKは全国の民放の参加を条件としていた。
 収入面でみると、AMが1990年、FMは97年をピークにそれぞれ減少傾向となっている。ラジオ全体の広告収入では2001年から12年連続で前年割れが続いている。さらに、50~60年が寿命ともいわれるAMラジオの送信所の更新時期が近づく事情もある。川や池など水辺にあると電波が伝わりやすいAMの場合、首都圏の局では約7万平方メートルという大規模な代替地が必要といわれ、多額の費用のめどは難しいのが現実だ。
 そこで浮上したのが、FM波の利用だった。FMは東京タワーなど高い場所から発信すれば送信所の更新問題は解決する。自民党が打ち出した国土強靱化計画に、 ・・・続きを読む
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筆者

川本裕司

川本裕司(かわもと・ひろし) 朝日新聞社会部員

朝日新聞社会部員。1959年生まれ。81年入社。学芸部、社会部などを経て、2006年から放送、通信、新聞などメディアを担当する編集委員。10年、論説委員兼務。17年4月から東京社会部。著書に『ニューメディア「誤算」の構造』。共著に『テレビ・ジャーナリズムの現在』『被告席のメディア』『新聞をひらく』。

 

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