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モスクワとローザンヌは、オリンピックと甲子園なのに

菘あつこ フリージャーナリスト

 この6月、第12回モスクワ国際バレエコンクールで名古屋市の畑戸利江子さんがジュニア部門の銅メダルに輝いた報道が、あまり目立たない記事なのを見て「あー、やっぱり、こんな感じの報道か」と思った。──というのは、約1年半前、ローザンヌ国際バレエコンクールで菅井円加さんが1位になった時、各新聞が1面で大きく報道し、その後テレビなどでも盛んに取り上げられた記憶がハッキリと残っていたから、つい比べてしまった。最初に断っておくが、ここで私は畑戸さんと菅井さんのバレエの実力や可能性がどちらが上だとかいう話をしたいのではない。2人とも日本のバレエの世界にとってとても貴重で楽しみな人材。各報道機関のバレエコンクールの取り上げ方の差に違和感を覚えてペンを取った。

 そもそも、この疑問を持ち始めたのは、4年前、第11回のモスクワ国際コンクールの時だった。現在、英国ロイヤルバレエ団に所属し主役もつとめる金子扶生さんと日本の新国立劇場バレエ団で活躍する奥村康祐さんが、この時、それぞれジュニア部門、シニア部門で銀メダルを受賞した(2人はペアで踊って揃っての受賞だったが、このコンクールの賞はそれぞれ個人に与えられるので、ペアで踊っても1人しか受賞しない例もある)。

 モスクワ国際バレエコンクールと言えば、4年に1度、ロシア・モスクワのボリショイ劇場で行われるバレエのオリンピックと言われる大会だ。世界三大コンクールというと、ヴァルナ(ブルガリア)、ジャクソン(米国)、そしてこのモスクワと言われ、シニア部門には主要バレエ団で主役を務めるダンサーが出場することも多い。1969年から行われ、過去の受賞者の顔ぶれを見ると世界の大スターとして活躍するバレエダンサーがずらりと並ぶ。

 金子&奥村とその指導者が帰国した後、話をする機会があったのだが、聞くと、彼らが受賞した時、表彰式会場には各国のメディアが詰めていて、自国のダンサーが金、銀、銅いずれかを受賞するといっせいに駆け寄って取材を始めたのだという。世界的に権威あるコンクールなのだから、まぁ当然のことだ。だけど、金子&奥村のところには日本の新聞社等のメディアは1社として来なかったという。会場にも ・・・続きを読む
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筆者

菘あつこ

菘あつこ(すずな・あつこ) フリージャーナリスト

フリージャーナリスト。立命館大学産業社会学部卒業。朝日新聞(大阪本社版)、神戸新聞、バレエ専門誌「SWAN MAGAZINE」などに舞踊評やバレエ・ダンス関連記事を中心に執筆、雑誌に社会・文化に関する記事を掲載。文化庁の各事業(芸術祭・アートマネジメント重点支援事業・国際芸術交流支援事業など)、兵庫県芸術奨励賞、芦屋市文化振興審議会等行政の各委員や講師も歴任。著書に『ココロとカラダに効くバレエ』。

 

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