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『いびつな絆 関東連合の真実』はなぜ売れるのか

久田将義 TABLO編集長

 まずは冷たい風が吹く、ノンフィクション界にとって久々のヒット作になるであろう、『いびつな絆 関東連合の真実』を企画した宝島社担当編集者で知己でもあるIさんの手腕に、末席を汚させて頂いている編集者としてリスペクトすると共に拍手を送りたい。

 後輩から「良い編集者とは何か」と尋ねられた事があった。悩んだ僕は「売れる雑誌、本を出せる人」と答えた。まずはプロとして売れる本を作らなければならない。これは編集者が常に抱える大きなプレッシャーである。それをIさんは克服された。また数年前に、同じようなスタイルの単行本を出してヒットさせている。宝島社発行、元山口組後藤組組長後藤忠政著『憚りながら』である。
 ただ、この手の告白本・暴露本は筆者が既に、一線を退いた、あるいは引退した人間でないと出版は難しい。古くはプロ野球の裏側を暴露した元巨人の強打者W・クロマティが著した『さらばサムライ野球』(R・ホワイティング共著 講談社刊)があるが、それも彼の引退後の告白である。
 しかし、『いびつな絆 関東連合の真実』は現在進行形の、いわゆる「六本木フラワー事件」について、当事者に近い筆者が内部告発したので話題を呼んだ。
 実は、僕はこの本は一行も読んでいない。一、二年後に読もうと思っている。僕にとってはそういう本だ。秋にはちくま新書から自著『関東連合 六本木アウトローの正体』(仮)という本を出す予定になっている事から、余計な先入観は入れたくなかったのと、恐らく読後感は悪いだろうからである。
 筆者の「工藤明男」とは、当然仮名である。それで思い出した。本の表紙に仮名と記していない事にまず、驚いたのだ。筆名を工藤明男で通すのだろうか。ネット上では熱心なアウトローマニアが多数存在しており、当然工藤明男という名前が誰をもじったものか分かっている。
 ネットルーモアの典型だが、東京・歌舞伎町を拠点とし、

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