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 広島原爆の日の8月6日に、1981年から市民の手で開かれている「被爆証言のつどい」という集まりがあります。「原爆被害者相談員の会」が主催し、午前中は複数の被爆者をそれぞれ少人数で囲んでいくつかのグループに分かれて証言を聞き、午後は全体集会として、そのときそのときのテーマを取り上げ、講演を聴き、討論する場を設けているそうです。今年も、ありました。

 実のところ、私はこの場にいませんでした。ただ、今年は広島入りしていた私のところに、この集いでとても考えさせられる出来事があったという情報がありました。参加者や主催者からお話をうかがいました。
彼らの話を総合すると、午前中は11人の被爆者が、小グループでそれぞれの話をしたそうです。参加者は150人超。「事件」が起きたのは、午後の全体集会のときでした。
 今年は、福島県浪江町の病院の医療ソーシャルワーカーを招き、浪江町を中心とする被災者たちの生活状況、病院の利用状況、またそういう住民たちをどうケアしているのかなどの話を聞きました。活動を紹介する映像などを交えての発表は約1時間ありました。
 その後の質疑応答で、広島の男性の被爆者の方が手を挙げて意見を述べました。おおまかに言うと以下のような話をされたそうです。
 「今日はこういうことをやる日ではないのではないか。私は違和感を覚えた。どうして福島の話をするのか。私は福島の地元紙も取り寄せているし、インターネットでも福島の情報を集めている。だから福島のことは知っている。今日は広島のことを考える日だ。被爆者は今日は静かにしていてほしいという気持ちをもっている。やるなら今日でなく、別の日にすればいい」
 その言葉に、会場全体が凍り付いたそうです。6時間かけて広島にやってきたという福島の医療ソーシャルワーカーの方は、その場ですぐ謝罪されたそうです。
 その後、会場から声があがりました。
 原爆小頭症の患者や家族を支援している女優の斉藤とも子さんが手を挙げ、こう発言したそうです。「私は福島にも足を運んでいる。何とかしないといけないと感じてきた。ヒロシマとフクシマはつながっている。福島の人たちは非常に苦しい思いをしている。放射線被害という意味では同じことで悩んでいる人たちだと思う。今日の話はとてもよかった。そういうことをわかっていただきたい」
 長崎の被爆者だという女性は「あなたの気持ちもわかる。でも、私は現地ともつながりたい。福島の方の今日の話はとてもよかった」という趣旨の話をされたそうです。
 この集いが始まってから毎年参加しているというジャーナリストの岩垂弘さんは ・・・続きを読む
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筆者

大久保真紀

大久保真紀(おおくぼ・まき) 朝日新聞編集委員(社会担当)

1963年生まれ。盛岡、静岡支局、東京本社社会部などを経て現職。著書に『買われる子どもたち』、『こどもの権利を買わないで――プンとミーチャのものがたり』、『明日がある――虐待を受けた子どもたち』、『ああ わが祖国よ――国を訴えた中国残留日本人孤児たち』、『中国残留日本人』など。

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