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山口組の暗闘と経済至上主義を描いた『鎮魂』

西岡研介 フリーランスライター

 日本最大の暴力団、山口組。その中でも「直参」と呼ばれる幹部(二次団体組長)で、2009年に山口組を除籍となり、引退した盛力健児氏が著した『鎮魂 さらば、愛しの山口組』(宝島社刊)が、好調な売り上げをみせている。
 大手書店や取次のランキングでは、ノンフィクション部門だけでなく、総合でも上位に入り、8月末の発売からわずか2週間で累計12・5万部を突破するなど、「ノンフィクション冬の時代」と言われる昨今では、「異例の売り上げ」と言ってもいいだろう。
 だが、同書のインタビュー・構成を担当した私からすれば、「12・5万部」という数字はまだ、“想定の範囲内”だ。
 というのも、3年前に同じく私が構成に携わった元山口組系「後藤組」組長、後藤忠政氏の『憚りながら』(同書も宝島社刊)は累計22・5万部の売り上げを記録しているからだ。
 とはいえ、私も、これら元山口組幹部ら「アウトローによる独り語り」という手法を採った書籍が「売れる」ということを、過去の経験から知っている――というだけで、それらが「なぜ、売れるのか?」については正直、まだ分析しきれていない。
 もちろん、それらが売れる理由の第一には、「怖いもの見たさ」、つまりは日頃、その実態がよく分からないアウトローの世界を覗いてみたいという、市井の人々の興味や願望があるのは間違いない。
 特に今回の『鎮魂』は、

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