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存命中の葬儀方式表明は画期的

岩井克己 ジャーナリスト

 宮内庁がこのほど天皇、皇后両陛下の意向を踏まえ、土葬で営まれてきた天皇・皇后の喪儀(そうぎ)を350余年ぶりに火葬で行い、陵も大正・昭和ご夫妻の例よりやや小ぶりにするという方針を発表した。「極力国民生活への影響の少ないものとすることが望ましい」とのご本人方の気持ちを踏まえたという。本人方が存命中に喪儀についての考えをおおやけにすること自体が画期的で、関係者や国民に心の準備を促す思いやりもうかがえる。
 天皇陛下は皇后さまとの合葬を望んだが、皇后さまは遠慮を示したため、合葬陵とはせず別建てを維持しながらも兆域が互いに寄り添う形となるそうだ。天皇は「上御一人(かみごいちにん)」であり陵での祭祀も別個になされるべきであり、皇后が先立つような場合は天皇の存命中に合葬陵の造営にかかるので、これは避けるべきだとの考えという。
 両陛下の配慮深さと皇室の懐の深さに敬意を覚える。
 ただ、細かいことを言えば(1)合葬なら大正・昭和の先例の半分の兆域ですむはずが、8割ほどの規模になったこと(2)存命中に陵墓建造に着手する「寿陵(じゅりょう)」は歴史的にも先例はあること(3)寄り添うなら二つの墳墓が互いにつながった「双墓(そうぼ)」形式も例はあることなどを考えると、どうして発表のような形に落ち着いたのか更に宮内庁の説明がほしい。将来世代の天皇・皇后がこうした寿陵や合葬を望んだり、さらにささやかな陵墓を望むこともあるかもしれない。
 また大喪を屋内で行う方向も示唆されているが、武道館などで前例のように

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