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デジタルラジオめざす湘南ビーチFMの試み

川本裕司 朝日新聞記者

 15年前に郵政省(現・総務省)が検討を始めたデジタルラジオは「V-Lowマルチメディア放送」の安全・信頼性に関する技術的基準について、総務省の電波監理審議会が11日に答申したことで、実現に一歩近づいた。市町村単位で最も地域に近いラジオ局であり防災面で注目を集めるコミュニティーFMにも、デジタル化をめざす動きがある。その象徴的な存在が逗子・葉山コミュニティ放送(愛称・湘南ビーチFM、本社・神奈川県逗子市)だ。NHKとフジテレビのニュースキャスターだったジャーナリスト木村太郎さんが社長を務め、デジタル戦略の旗を積極的に振っている。

 現在、地上波テレビのデジタル化で空いた周波数を使うマルチメディア放送に参入を表明しているのはエフエム東京系だけ。来年2~3月に予定される電波監理審議会の認定を受けられれば、エフエム東京は来年夏ごろのスタートを見込む福岡県を皮切りに、来年度中に近畿地方、首都圏と事業を拡大させること計画だ。

 東日本大震災の被災地で開設された臨時災害放送局で存在感を見せたコミュニティーFMのデジタル化は検討中であり、そのあとになる。昨年5月に総務省が発表した参入希望調査結果では、湘南ビーチFMをはじめ14社が名乗りを上げた。

 湘南ビーチFMは東日本大震災のときは、13時間にわたり災害放送に切り替え、地元の逗子市や葉山町の様子やNHKテレビの内容などを伝えた。本社とスタジオは当時、相模湾に面した葉山マリーナにあった。過去の大地震を想定したときの津波被害を考慮し、昨年3月、海岸から約2キロ内陸の逗子市池子2丁目の住宅街に本社とスタジオを移転させた。

 新しい本社ではデジタル化による多チャンネルに対応できるように、スタジオを2つから4つに増やした。昨年春から1年間かけ、デジタルコミュニティー放送に向けた電波の実証実験をした。デジタルラジオを聴くために必要となる専用の受信機や送信機の試作品もつくった。緊急警報信号が出たときは自動的に立ち上がるシステムも導入する構想だ。

 関東地方で初のコミュニティーFMとして1993年に開局した当時からの社長である木村さんは「デジタル化については3年前から計画している。デジタル化すれば3チャンネルの放送も見込める。コミュニティーFMではいち早くインターネット配信を96年から始めた。海外でも聞かれ、リスナーの数は10倍に増え、北陸地方のAM局にも番組販売をしている。ラジオにはまだまだやれることがある」と熱い意気込みを語る。

 湘南ビーチFMの番組は、住民に多い中高年層を意識した大人向けの音楽に特化している。ジャズを中核にすえ、米国のオールディーズもよく流す。スポンサーの意向で邦楽を流す30分番組を除けばすべて洋楽と、色合いをはっきり打ち出している。

 日曜午後の看板番組「SHONAN BREEZE」をサブスタジオの逗子マリーナから伝えているパーソナリティー竹下由起さんは

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