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ローザンヌの快挙を日本バレエのこれからを考える機会に

菘あつこ フリージャーナリスト

 ローザンヌ国際バレエコンクールで日本人が1位、2位、加えて6位も日本人で6人の入賞者のうち3人が日本人というニュースが大きく報道された。1月26日~2月2日、スイス・ローザンヌで行われたこのコンクール、15歳~18歳だけが参加でき、将来有望なダンサーに留学の機会を与えて育てることを目的としたバレエ・ダンサーの登竜門だ。過去に熊川哲也さんや吉田都さんを輩出したことでご存知の方が多いだろう。

 私は現地には行けなかったが、インターネットでファイナルの映像を観た。クラシック・ヴァリエーションとコンテンポラリー・ヴァリエーションの2曲を踊って総合的に評価される形で審査が行われる。1位を獲得した二山治雄さんはクラシックで『ラ・バヤデール』よりソロルのヴァリエーションを踊った。人並みはずれた柔軟性があるからなのだろう、全体的に動きに心地よい軽さがある。また、彼の前の脚が高くあがるジュテ・アントゥールナンを観て、2010年に「こうべ全国舞踊コンクール」で、まだ小さかった彼が同じヴァリエーションを踊って、やはり大きく前の脚が上がっていたのを思い出した。この時、彼は男性ジュニア2部で1位を獲得し、インタビューに応えてもらったのだった。ちなみにこの時、女性ジュニア1部の1位が2年前にローザンヌで1位になった菅井円加さん。あの時、同じインタビュールームに2人が並んでいたのだと思うと感慨深い。彼はコンテンポラリーも滑らかさを持った上でメリハリもあり音楽性を感じさせた。

 2位の前田紗江さんの『ラ・バヤデール』の女性ソリストのヴァリエーションも基礎に忠実な形、自然な表情に好感が持て、コンテンポラリーでのピアノ曲にのせた滑らかな踊りも良かった。6位の加藤三希央さんの爽やかな踊りも今後が楽しみ。3人のダンサーたちが今後、世界的に活躍するダンサーになるべく努力を続けてくれることを心から応援したい。

 さて、そこでふと思う。日本人は彼らのような才能のあるダンサーがプロとして踊る公演を観たいと思わないだろうか? というのは、日本には全国にバレエ教室があって、それは諸外国のような国立や公立ではなく私塾のような形でありながら諸外国の国公立に劣らないダンサーを数々育てている。けれど、日本には、そこで育った彼ら彼女らが活躍できるバレエ団はほとんどないのだ。彼らの踊りを享受するのは、ヨーロッパやアメリカなど諸外国の人々。バレエは西欧が発祥の芸術だから、それは自然なことかもしれない。

 けれどアジアでも、中国には複数の公的なバレエ団があるし、韓国には大学の舞踊学科が多く、コンテンポラリー中心にプロとして活躍の場も日本に比べて多いように見える。日本には、国立のバレエ団として唯一、新国立劇場バレエ団があるが、その一つだけでは、日本全国の人が生でバレエを観るには足りなさすぎると私は思う。私立のバレエ団で優秀なところはあるのだが、そこで踊るだけで生活できる人は本当に限られた人のように見える。

 ここで、ローザンヌ国際バレエコンクールというのは、どういうコンクールなのか見直してみたい。ファイナルに残ったダンサーの国籍を見ると、日本の他に、ブラジル、USA、スペイン、フランス、ドイツ、韓国、スウェーデン、中国。フランス等西欧のダンサーはいるが、国のトップのバレエ学校ではない──バレエのトップと言われるような、そういう自信を持っているようなパリ・オペラ座やロシアのマリインスキーに入団する直結バレエ学校の生徒はローザンヌに出場しないのだ。それは当たり前で、これは留学機会を与えるコンクールなのだから ・・・続きを読む
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筆者

菘あつこ

菘あつこ(すずな・あつこ) フリージャーナリスト

フリージャーナリスト。立命館大学産業社会学部卒業。朝日新聞(大阪本社版)、神戸新聞、バレエ専門誌「SWAN MAGAZINE」などに舞踊評やバレエ・ダンス関連記事を中心に執筆、雑誌に社会・文化に関する記事を掲載。文化庁の各事業(芸術祭・アートマネジメント重点支援事業・国際芸術交流支援事業など)、兵庫県芸術奨励賞、芦屋市文化振興審議会等行政の各委員や講師も歴任。著書に『ココロとカラダに効くバレエ』。

 

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