団体戦の思いもよらない影響
2014年02月10日
それにしても羽生結弦とプルシェンコ(ロシア)。19歳と31歳。団体戦、個人戦と、フィギュアスケートの歴史に残るような彼らの対決になりそうだ。
2010年に世界ジュニアチャンピオンとなり、アイスショーで憧れの人と接する機会が増えると……。
「練習時間にプルシェンコさん、僕にビールマンスピンを教えてくれたんですよ!」
「俺に勝てよ! なんて言われちゃった!」
「いろいろ教えてもらってたら、彼の奥さんが怒り始めちゃったんです。『もうその子には何も教えるな』だって(笑)」
そんな嬉々とした言葉を聞いた時は、まさかオリンピックで、こんな形で、ふたりが初めて対戦するとは思いもよらなかった。10歳以上年の離れたふたりがあいまみえることは、年上の方がよほど長く第一線に立ち、年下の方が誰よりも早く成長して同じ舞台に上がってこなければ不可能だ。
世代の違うスーパースターふたり、彼らふたりともがその難条件をクリアし、ついに初対決を迎えたのが、オリンピック史上初の団体戦だったとは――こんなドラマを、「ビールマン、教えてもらっちゃった!」とはしゃぐ少年の姿から、誰が予想できただろうか。
4年前のバンクーバー五輪の時も同じことを感じたが、試合への出場数が少ない分、プルシェンコはいかに得点を稼ぐかの細かな対策という点で、少し詰めが甘いように見えてしまう。
しかし羽生自身も、フィギュアスケートはそれだけではないことはわかっているだろう。得点の上で勝ったとはいえ、存在感、オーラ、観客を離さない引力では、完全にプルシェンコが彼の上だったことを。
ロシアの観客の前だから、ではない。たぶん日本のアイスショーでふたりが今日の演技をしたとしても、拍手はプルシェンコの方が多かったはずだ。
たぶん今回も、勝負には勝ちつつ、自分にまだないものをプルシェンコが見せつけたことを、彼は感じている。そしてそれを、とても悔しがっているはずだ。
ならば次の対戦、2月14日、15日の男子個人戦、ショートプログラム――初対決で得たものを、どう消化して再戦に臨んでくるか。羽生結弦の再登場が、いっそう楽しみになってしまった。
思った以上に羽生にとって大きかった、団体選出場の意味。彼だけでなくこの新種目、フィギュアスケート団体戦は、思いもよらなかった影響を今回のオリンピックに与えそうだ。
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