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[22]鈴木明子と村上佳菜子(4)

仲が良すぎた3人

青嶋ひろの フリーライター

 鈴木明子のショートプログラムの滑りは、全体的に慎重なものに見えてしまった。それは、「愛の讃歌」にあまりにも賭けた思いが深く、完成度が高く、いいものができた自信も大きく、スペシャルなプログラム過ぎたためではないだろうか。

 守るもの、見せたいものが重かったり、大きかったりするほど、オリンピックは手ごわい。鈴木自身はジャンプミス以外は見せたい「愛の讃歌」を見せられた、とコメントしたようだが、「あなたの『愛の讃歌』は、こんなものではないでしょう?」と、酷なのは承知で思ってしまう。

 終盤、ふだんなら心地よく身を預ける音楽に溺れてしまうように、ここで舞っていることが不安で仕方ないように、動きが小さくなっていく彼女の姿を、少し切ない気持ちで眺めるしかなかった。

 翌日。ショートプログラムに比べれば、フリー「オペラ座の怪人」は、ずっとずっと明子ワールドを見せられた演技だっただろう。柔らかい腕の動きを中心に、四肢すべてで語りかけるように、ひとつの世界を描き出す、彼女だけの表現。前日には影を潜めていた、世界の銅メダリスト、トップスケーターの貫録もしっかり取り戻していて、最後まで表現のひとつひとつをタイトにこなし、最後まで愛の物語を舞いきってくれた。

 惜しかったのはトリプルフリップの転倒や続くトリプルループのオーバーターンなど、小さくないミスが続いてしまったこと。世界屈指の力強い美しさを持つ明子ワールドとはいえ、競技の氷の上ではジャンプのミスが大きな傷になる。それは、ミス後も演じ続けなければならない彼女の心に小さな影を落としてしまったようだ。やはり鈴木明子の真の力を知っているだけに……このフリーでもまだ、悔しさは残る。

 村上佳菜子と鈴木明子は、なぜ本来持っているはずのパフォーマンス力のすべてを、ソチ五輪で発揮できなかったのか?

 これはあくまで私見であり、いくつもある要因のひとつに過ぎないだろうが、筆者がずっと気になっていたことがある。それは、浅田真央を

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