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遠藤も大相撲も、もっと大事なことがある

倉沢鉄也 日鉄住金総研研究主幹

 つい2、3年前まで存亡の危機、いや、解散してしまえとばかりの世論を世の中全体であおっていた感のある大相撲。現在、スピード出世のイケメン平幕力士1人の特集が連日テレビをにぎわせ、社会現象のように取り扱われている。大相撲が興行ビジネスである以上、人気力士の出現自体はよいことに決まっていて、セミヌード(舞台衣装自体がセミヌード……)の写真集でも、永谷園のテレビCMでも、どんどん露出して、大相撲の様々な魅力に気づいてもらい、そして大相撲が「日本人一人ひとりのいいも悪いも映す鏡」であることに気づいてもらう機会になればよい、と思う。しつこさすら感じるスポーツニュースでの持ち上げ方も、ないよりはあったほうがよい。

 遠藤は、おそらくそうした騒音に浮かれることなく、上位陣との積極的な稽古に励んだ結果として、今場所は安定した横綱大関陣(と丸2年関脇を続ける豪栄道)にまだ力は通じず、逆に怪我を抱える稀勢の里、琴欧洲を含めてそれ以外の力士には技術的なうまさで勝利して、4勝5敗(9日目終了現在)と、上位総当たりの地位に初めて進出した力士としては十分に健闘している。現に遠藤と当たった上位陣は余裕で力量差を見せることはなく、余裕なしのフルパワーで対戦していることは映像でも明らかだ。十分に要警戒力士だが、まだ結果は伴わない。

 大相撲を長い目で見る観点では、それ以上でもそれ以下でもない。そして日本相撲協会自体も決して悪乗りせず、最小限のファンサービスの露出だけさせて、一平幕力士として(しかし全力士中11番目序列の強豪力士として)厳正に取り扱っているに過ぎない。

 これまでも、イケメン力士のスピード出世などいくらもあった。この50年くらいだけ振り返っても、横綱に至った大鵬柏戸、二代目若乃花(元若三杉)、若貴兄弟のみならず、入門即横綱を嘱望されたという点では豊山(元大関)の女性からの人気は大変なものだったし、角界のプリンス・貴ノ花(若貴の父)は22歳で大関に駆け上がった。蔵間(元関脇)、寺尾(元関脇)、舞の海(元小結)などもこれにあてはまるだろう。外国人力士にイケメンという表現は使われにくいが、現役の琴欧洲も桁外れのスピード出世だった。これらの力士は最も成功したケースで、イケメンまたはスピード出世自体は挙げればきりがない。本当に実力をつけて、怪我なく、上位を勤め上げることは、そうした要素とあまり関係がない。前の場所までの成績で純粋に序列と収入が定められ、上り詰めた者は弱くなったら辞めなければならない。遠藤は、シンプルなルールの社会での、歴史の中の一員に過ぎない。

 だからいま遠藤に期待することは、まだ華奢とも言える現在の体を2年3年かけて上位陣にふさわしい体に作り上げ、現在の技術的なうまさに圧力を増していき、上位に定着する結果を残すこと、であり、本人も師匠もそれ以外は関心のないところであろう。この点(イケメン以外は)出世も体形も相撲もよく似ている豪栄道と栃煌山(今場所の関脇2人)がここまでどのような身体的成長と、上位定着までの時間をかけてきたか、を考えたときに ・・・続きを読む
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筆者

倉沢鉄也

倉沢鉄也(くらさわ・てつや) 日鉄住金総研研究主幹

1969年生まれ。東大法学部卒。(株)電通総研、(株)日本総合研究所を経て2014年4月より現職。専門はメディアビジネス、自動車交通のIT化。ライフスタイルの変化などが政策やビジネスに与える影響について幅広く調査研究、提言を行う。著書に『ITSビジネスの処方箋』『ITSビジネスの未来地図』など。

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