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「ビッグデータは宝の山」は本当か

川本裕司 朝日新聞記者

 ソーシャルメディアの利用者増加と新しいネット解析技術の進展で、ネットワーク上に生み出されるビッグデータが「宝の山」として注目を集めている。内閣官房は「パーソナルデータに関する検討会」を設け、ビッグデータを成長戦略の起爆剤となるよう新たなルールづくりビジネス面から後押しする姿勢を打ち出している。検討会は6月24日に大綱をまとめ、7月24日までパブリックコメントを募集したうえ、来年1月からの通常国会に個人情報保護法改正案を提出する方針だ。政府として力こぶの入るビッグデータの経済効果は、果たして本物なのか。

 昨年6月、政府は「世界最先端IT国家創造宣言」を閣議決定した。これに合わせ政府のIT総合戦略本部に「パーソナルデータに関する検討会」を設けた。国がビッグデータに熱い視線を送るのは、米IT企業のグーグルやアマゾンの急成長がある。利用者情報などを新しい技術で解析し、広告やおすすめ商品に活用しているのに着目した。

 日本では、あるトラブルからビッグデータが注目された。昨年7月、JR東日本がICカード「スイカ」の乗車履歴データを駅周辺ビジネスのマーケティングに使おうとした日立製作所に販売したことに批判が出たのだった。データに氏名や連絡先は含まれないよう統計処理していたが、利用者への説明が不十分と指摘された。5月時点で履歴提供削除の申し出は6万1千件。最近でも毎月200~300件の申し出があるという。

 個人情報の利用に対する敏感さを物語る反応だった。他方、国や経済界からはビッグデータ活用への強い意欲が示されている。

 ビッグデータの活用による経済効果は年間7兆7700億円――。昨年7月に総務省が編集した情報通信白書の記事で、巨額の数字が見出しになった。ただし、この数字は白書の本文にはない。「潜在的な経済効果の推計結果」の表に載った小売業、農業など4分野を合計した額だ。細かく見ると、製造業の人件費効率化4兆7380億円、インフラ(道路・交通)の渋滞削減による燃費節減が1兆1600億円など支出減や、

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