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東海社会学会2014年大会から見えてくる東日本大震災の被災問題

樫村愛子 愛知大学教授(社会学)

 先日(7月5日)、東海社会学会の2014年大会が愛知県立大学で開催された。東海社会学会は、2008年に設立した、まだ新しい学会だが、地域のNPO関係者の幅広い参加など、当初から、地域や社会に開かれた学会を目指してきた。

 本年度のシンポウムは、昨年度のテーマを深化させる形で、「東日本大震災と社会的弱者――Part 2」として行われた。

 震災から3年がたっても、復興が進まないのは、(1)被害の大きさ、(2)対象地域の生活が漁業や農業など環境依存が強く、放射能被害と、災害対策的な復興において困難をもつこと、(3)災害以前からの山間地や過疎地問題、(4)原発事故という、いまだ収束しない問題等々といった理由がある。この意味で、いまも震災というテーマは、社会的にアクチュアルである。実際、マンガ学会、家族療法学会等々、さまざまな学会が、この間の震災問題を中間的に報告し、また終わらない問題として提起している。

 東海社会学会についても、昨年度から引き続くテーマである「社会的弱者」について、(1)そもそも原発立地が過疎地や自治の弱い地域で「弱者」の地域であったこと、東北が日本において弱者の地域であったこと、のみならず、(2)ネオリベラリズムの推進の中、市町村合併により小さなコミュニティのケアが消滅したこと、災害復興に関する大企業の確信犯的な弱者排除、といった今日的コンテクストが存在している。

 東海地域では、被災地および愛知で、震災に関する精力的な社会学的研究がなされてきた。昨年度は、その中核メンバーによる豊かなシンポジウムがなされた(私自身はパリで在外研究中だったので、残念ながら聴講できなかったのだが)。本年度も、震災の現場のフィールド研究が取りあげられ、まだまだ進行中のさまざまな問題がアクチュアルなものとして提示され、とても興味深かった。

 時岡新氏の「震災遺児・遺児家庭に対する支援の現状と困難」は、あしなが育英会の活動を通してみた、神戸との比較も含めた、震災以前・以後の比較研究であった。あしなが育英会がふだんは交通遺児支援の活動をしているだけに、災害時との差異が浮き彫りにされ、社会学的には、とても興味深い重要な研究であった。

 神戸では親は圧死か焼死であり、死の現場に立ち会わざるを得なかったのに対し、今回は多様性が大きく ・・・続きを読む
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筆者

樫村愛子

樫村愛子(かしむら・あいこ) 愛知大学教授(社会学)

愛知大学文学部社会学コース教授。1958年、京都生まれ。東大大学院人文社会系研究科単位取得退学。2008年から現職。専門はラカン派精神分析理論による現代社会分析・文化分析(社会学/精神分析)。著書に『臨床社会学ならこう考える』『ネオリベラリズムの精神分析』、共著に『リスク化する日本社会』『現代人の社会学・入門』『歴史としての3・11』『ネオリベ現代生活批判序説』(新評論)など。

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